なぜ今の女性は“出会い系”に抵抗がないのか?
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン“と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆なぜ今の女性は“出会い系”に抵抗がないのか?
勤め人(ペンネーム)・会社員・男性・53歳
最近の女性の多くが「出会い系」に抵抗を持っていないことに驚いています。
会社の若いコはナントカという出会い系アプリで知り合った男と夜ご飯を食べると話すと、それを聞いた同僚が「私もやってる」という具合です。それも、結構いろんな男性と会っては食事をしているようです。一昔前の出会い系は犯罪の温床のようなものだった気がします。それ以前に、出会い系は人間関係の貧困さを象徴しているような気がしてなりません。ネット社会ではもはや当たり前と言われればそれまでですが、娘に「出会い系をやっている」などと言われたら、卒倒してしまいそうです。
いつからこんな顔の見えないお付き合いのなかによりどころを探す人が増えてしまったのでしょうか? 勝手ながら、若いコたちの将来を憂い、佐藤さんにご相談させてもらいました。
◆佐藤優の回答
勤め人さんは、私とだいたい同世代(私は’60年1月生まれで現在56歳です)なので感覚を共有していると思います。確かに「出会い系」に抵抗感を覚えない若い女性たちが増えています。「いつかトラブルに巻き込まれるのではないか」と心配になります。しかし、それは若い人たちのモラルが低下しているからではありません。「出会い系」という依存性があるビジネスに取り込まれてしまっているからです。この点について、精神科医の和田秀樹先生の見方が参考になります。
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アルコールやパチンコ、ギャンブル、タバコ、そしてゲームにスマホ――そうした社会的不安を背景に成長してきたのが、依存症ビジネスです。基本的な生活財がいきわたっている現在は、お金を使わせるのであれば、人を何かに依存させてお金を巻き上げるビジネスが一番でしょう。(中略)
依存行動をしている人の脳内では神経伝達物質であるドーパミンが大量に放出されることがわかっています。ドーパミンが放出されている間は、現実の痛みを忘れることができ、不安な気持ちが払拭されます。普段の生活で得られない強い刺激を求めている彼らが、何度も繰り返し同じ行動にハマるのは、そうした状態を求めてのことなのです。
※『この国の冷たさの正体』80~81頁
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恐らく、あなたが見ている若い女性たちも、会社の中で、また自分の生活の中で、さまざまな問題を抱えているのだと思います。出会い系で女性と知り合って、そこからカネを巻き上げることを考えている悪い男もいます。しかし、一度、そういう世界にハマってしまうと、なかなか抜け出すことができません。なぜなら、相手の男に騙されて、利用されているという現実を認めると、そのような男を信じてしまった自分がみじめになるからです。そういうみじめな自分を認める状況になることが嫌なので、ヒモのような男から離れられなくなった女性を私も何人か見ています。
重要なのは、「出会い系」だけでなく、ラインやフェイスブックなど、バーチャルな世界での人間関係が、虚妄であるということに気付くことです。もっとも、依存症になった人に「あなたは今、たいへんな状況になっているのだ」と指摘しても、相手はまったく耳を傾けてくれないと思います。「うるさいオッサンだ」と嫌がられるだけと思います。
この種の問題を1人の力で解決することはできません。それですから、「出会い系」にハマっている部下や同僚がいるときに、さりげなく依存症の危険性について話をして、相手に自覚を促すのがいいと思います。「出会い系」などに深入りすると、最終的にはカネが回らなくなり、その結果、借金苦に陥る可能性があるという話を、『闇金ウシジマくん』のエピソードを交えて話すと、若い人も事態の深刻さに気づくと思います。
【今回の教訓】
依存症ビジネスに若い人が取り込まれている
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【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』のなど著書多数。最新刊は『90分でわかる日本の危機』’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
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『生き抜くための読書術』 ウクライナ危機、元首相暗殺事件、コロナ社会、貧困etc. 分断社会を打破する書物とは? |
『90分でわかる日本の危機』 ニッポン放送で大好評だった特別番組を書籍化。日本再生をテーマに、著者が下村博文文科相、山口那津男公明党代表など5人の専門家と語り尽くす。’15年刊 |
『この国の冷たさの正体』 ネット私刑、いじめ、生活保護バッシング、テロ犠牲者に「国に迷惑をかけるな」―。なぜ日本人は、ここまで冷たくなったのか。個人、会社、国家、どの位相でもインチキな自己責任の論理が幅を利かせている日本。「自由」よりも強者の下で威張ることを好み、「平等」よりも水に落ちた犬をぶっ叩く。わたしたちを取り巻く病理を徹底解剖。 |
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