満月の下、裸足でインド聖山を巡礼した――小橋賢児「小さい奇跡が重なり合い。大きな奇跡を産む」
そして…かれこれ5時間くらいは歩いただろうか、14kmと聞いていた道のりは実際には16kmもあったそうだ。
さすがに5時間も裸足で歩き地面と接していると自然と身体が一体になったような感覚もうまれ、自分が自然の一部のような感覚にさえなった。思考は明らかにクリアになり、歩き始める前よりも俄然元気になっている感じであった。
僕が日頃サーフィンや山登りをしているのもこのように自然と一体になれる感覚を大事にしているからで、それはまるで目に見えないものとをつなぐアンテナを鍛えるようなものでもあるからだ。しかし、山登りやサーフィンが出来なくとも、いつも電車や自転車で行く道のりを歩いてみたり、夕陽や夜空の星を眺める事だってそれらのアンテナを鍛えることはできる。そしてアンテナが強まると流れというものが良くなり、誰かを想えばその人から連絡があったり、何かがほしいと想えばそれが手に入ったりもする。
不思議に思う人もいるかもしれないが、自然と宇宙の力を味方にすればこれらはいとも簡単にやってくる。
満月の日にこの地を訪れたのもきっと偶然ではないし、むしろこの日に訪れてなかったら16kmも裸足で歩く事なんてなかっただろう。
そして、ギリプラダクシナ後には現地に在住している素晴らしい日本人の整体師の方に出会う事ができた。
数年前にこの地に移り住んだそうだが、その方もまた初めてこの地を訪れた日が満月の夜だったそうだ。ありがたいことに予約でいっぱいの中、無理やり時間をあけていただき身体を診てもらえることになった。
整体師:このティルバンナマライにはどれくらいいるのですか?
僕:まもなく出発する予定ですが…
整体師:そうですかぁ…そこにある寺院とかいかれました?
僕:いいえ
整体師:あらもったない。そこの寺院も素晴らしいですし、さらに山の上にも素晴らしい場所がいくつかあるんですよ。
正直、ギリプラダクシナもできたことだし、見つけた宿の前が騒々しかったのもあり、この地はもう満足という感じになっていたのだが、
その整体師の方の言葉が妙に気になり、もう1泊してみようかという気分になった。
そして、近くの寺院にいってそれはすぐにわかった。
そこにはこの地を愛し、生涯をこの地に注いだラマナ・マハリシという聖者のアシュラムがあり、これまで訪れたどの寺院よりも神聖な空気に包まれていて、そこを訪れている人々もまたピュアなエネルギーをはなっていた。アシュラムの裏側にはアルナーチャラ山が隣接していて、そのまま山の頂上まで登れるようになっていていたので、せっかくなので山頂からご来光でもみようと翌朝、まだ夜が明ける前から登頂することにした。
まだ真っ暗の中から登り始めたのもあってなかなか道がわかりにくいのだが一匹の犬が僕を守ってくれるかのように最後まで一緒についてきてくれた。おかげで妙な安心感もあり山頂まではあっという間であった。頂上に到着した瞬間、完璧すぎるタイミングで太陽が顔をだし、素晴らしいご来光を拝むことができた。そして僕が山頂についたのを見届けると不思議と僕の元からその犬は離れていった。
他の人もいたのに何故か僕だけにずっとついてきたあの犬が、なぜか先日の村でなくなった犬と同じような気がしてならなかった。
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