忍び寄る“ステロイド裁判”の黒い影――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第109回
ザホリアン医師は捜査段階でホーガン、ビンス、現役レスラーではないフレッド・ブラッシーやロード・アル・ヘイズらにも数回にわたりステロイドを売ったことがあるという供述をはじめた。この情報にマスメディアが飛びついたことはいうまでもない。
ホーガンの定番のキャッチフレーズは“神への祈りとビタミン”だったから、そのビタミンの正体が違法薬物のステロイドで、子どものヒーローであるホーガンとドラッグの密売人の黒い関係が事実だとしたら巨大なスキャンダルということになる。
ABC、CBS、NBCの3大ネットワークのニュース番組はこのニュースを連日報道し、『ニューヨーク・タイムス」『USAトゥデー』といった新聞メディアもトップ面で“ステロイド疑惑”の特集記事を組んだ。
ザホリアン医師がペンシルベニア州アスレティックック・コミッションの公認ドクターとしてWWEのハウスショーにアデンドするようになったのは1979年。検察側は、医療目的以外でのステロイドの流通・販売がまだ違法ではなかった1988年以前の事例については立件を見送り、新しい法律が施行された1988年11月から1990年3月までの17カ月間に限定して17件の起訴事実について慎重に捜査を進めていた。
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