全米を震撼させた“ステロイド裁判”――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第110回
弁護側のウィリアム・コストポラウス弁護士は「ホーガンにステロイドの使用をやめさせたのも被告」という点を強調した。ホーガン不在の法廷で“ハルク・ホーガン”のブランドネームだけが独り歩きした。
コストポラウス弁護士は(1)レスリング・ショーのリングサイド医師としての仕事は日給35ドルの事実上、ボランティア活動だった(2)被告はヘロインやコカインといった麻薬を販売したわけではない(3)ステロイドの有害性は医学的には証明されていない(4)被告はステロイドに関する法改正の事実を認識していなかった、という4つの争点を柱に口頭弁論を展開し、最後にザホリアン被告、ホーガン、ビンス・マクマホンの3人が笑顔で並ぶスナップショットの記念写真を陪審員に見せた。
検察側セオドア・スミス検事は、ステロイドの長期服用による有害性とその後遺症を立証する証人として“スーパースター”ビリー・グラハムを出廷させた。グラハムは約25年間におよぶステロイド投与で虚血壊死という重度の関節炎を患い、骨がこなごなに砕けた両足首、でん部にはスティールプレートの人工関節、人工骨が埋め込まれていた。
スミス検事はグラハムから「WWEのレスラーの90パーセント以上がステロイドを使用している。ほとんどのステロイドはザホリアンによって供給された」という証言を引き出した。検察側の嫌疑の矛先はザホリアン被告だけでなく、どうやらWWEとビンスにも向けられていた。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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