更新日:2022年07月10日 11:01
スポーツ

ビンスとフレアーの密室ネゴシエーション――フミ斎藤のプロレス講座別冊 WWEヒストリー第113回

 NWA世界ヘビー級王者としてはフレアーの先輩にあたるハーリー・レイスは、WWE在籍時代、王冠とパープルのケープのリングコスチュームを身にまとい“キング”ハーリー・レイスを名乗った。ダスティ・ローデスは、黒とイエローの水玉模様のタイツをはき、コミカルなタッチのブルーカラー系キャラクターを演じた。レイスもローデスも、WWEのリングでは元NWA世界王者としてのプロフィルを完全に抹消された。  この時点でNWA/WCW世界ヘビー級王座のチャンピオンベルトを所有(WCWは王座ハク奪を発表)していたフレアーは、チャンピオンベルトを腰に巻いてWWEのリングに登場することを希望し、ビンスもこれを「それはいいアイディア」と了承した。  しかし、NWA世界王者という肩書、“ネイチャーボーイ”というニックネームの使用は却下した。ビンスにとって、それは他団体の存在を認める“自殺行為”だった。  フレアーが考えるところの“リック・フレアー”のキャラクター設定には、セミロングのブロンドの髪、タイツ、リングシューズ、ニーパッドの色と形、ローブと呼ばれるロングガウンのデザインも含まれていた。フレアーはあくまでも“リック・フレアー”としてのWWE移籍にこだわり、ビンスもフレアーの商品価値には最大限のリスペクトを示した。  フレアーは、ビンスと契約交渉の話し合いをおこなったあと、じつはジム・ハードWCW副社長、ジャック・ピートリックTBS(ターナー・ブロードキャスティング・システム)取締役ともミーティングの場を持った。ここでWCWサイドはフレアーに契約延長を打診し、フレアーの希望額どおりの年俸を提示したとされるが、フレアーはこのオファーを断った。  ハード副社長はフレアーに対し「チャンピオンベルトは会社のもの。持ち出せば法的措置をとる」と警告したとされるが、フレアーは「このベルトは私の個人所有」とこれをはねつけた。WCWとの最後の折衝後、フレアーは電話でビンスとコンタクトをとり、WWEとの3年契約を口頭で約束した。
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