ブレット・ハートへの政権交代にまるで“三角トレード”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第132回
ブレットはこの時点ですでにキャリア15年、35歳のベテランだったから、どちらかといえば“遅咲き”の部類に入るスーパースターということになるかもしれない。
ビンス・マクマホンは、ハルク・ホーガンではなく、またホーガンに代表される“80年代型・筋肉マン”のイメージをひきずるアルティメット・ウォリアーでもセッド・ジャスティスでもないサムバディとしてブレットをWWEの新しい主役に抜てきした。“スーパーヘビー級信仰”のビンスとって、それは大いなる冒険だった。
ブレット自身はみずからのキャラクターを“プレーン、シンプル、グッド・レスラー”と分析していた。プレーンははっきりと、明らかな、わかりやすいという意味で、シンプルはシンプル。グッド・レスラーとは、ブレットが定義するところのプレーンかつシンプルな“いいレスラー”のイメージということになる。
ブレットにとって、ホーガンのプロレスは退屈な定番ムーブのくり返しで、フレアーのプロレスもまたパターン化したルーティンのリフレインでしかなかった。ふたりともプロレス史にその名を残す千両役者であることは事実だが、子どものころからリングのすぐそばでありとあらゆるレスラーのありとあらゆるプロレスに接してきたブレットの目にはホーガンもフレアーもいちど試合を観ればそのすべてがわかってしまう“大根役者”に映った。
チャンピオンとは100人の対戦相手と100通りの試合ができるグッド・レスラーでなければならないというのがブレットの持論で、その主張どおり、新チャンピオンとなったブレットはビンスをはじめとする首脳陣に対して全米ツアーのカード編成のシャッフルを直談判した。
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