ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード08=ネイルズの証言――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第161回
「場所はウィスコンシン州マディソン。日時は1989年6月9日。TV撮りがおこなわれた日だ。オレは友人のルードといっしょに会場にいた」
「ビンスがルードに話しかけてきた。ビンスは『もっと体重を増やしたほうがいい』といい、ルードは『ワークアウトはちゃんとやっています』と答えた。するとビンスは『キミのポジションだったら、もっともっと体を大きくしてくれないと困る』とルードに告げ、ルードが『スケジュールがキツくて体重が落ちてしまった』というと、ビンスは『だったら“ガス”をぶち込め』と命令した」
「オレは1992年1月にフロリダのTVショーでビンスとミーティングを持った。“囚人”ネイルズのキャラクター設定に関する話し合いだった。ビンスがオレに『“ガス”は使っているか』と聞いてきたので、オレは使っていませんと答えた。ビンスはオレのリアクションを鼻で笑い、はっきりと『使え』といった。その場にいたのはオレとビンスのふたりだけで、エグゼクティブのパット・パターソンは部屋の外に立っていた」
ビンス・マクマホンとタイタン・スポーツ社(WWEの親会社=当時)の弁護人、ジェリー・マクデビット弁護士とローラ・ブレベッティ弁護士はワーコーズのコメントの矛盾点をついた。
――あなたがWWEと契約したのは1992年3月です。“問題の会話”があったとされる1989年6月にどうしてウィスコンシンにいたのですか。
「オレはその日、コントラクト(契約書)なしで試合に出場した」
――あなたはビンスをセクシャル・ハラスメントで告訴し、現在も係争中ですね。
ワーコーズは「ドレッシングルームでビンスに体を触られた」として1993年にビンスとタイタン・スポーツ社を提訴。ビンスとタイタン・スポーツ社はその後、ワーコーズに対して名誉毀損による損害賠償請求訴訟を起こしていた。
――“セクハラ裁判”の宣誓供述書のなかで、あなたはセクハラについては語っているがステロイドについてはなにも語っていない。また、あなたは大陪審(予審)でもステロイドについては証言していない。いまこの裁判でステロイドについて話そうと思ったのはなぜですか。
「ビンスはオレに“囚人”ネイルズはメインイベント・キャラクターになれるといった。メインイベントに出場するためにはステロイドを使い、体を大きくするよう指示した。ビンスは『このビジネスで成功するもしないもキミ次第だ』といった。オレはそれを“命令”と理解した」
――ネイルズというキャラクターは囚人服を着ています。この衣装だと全身が隠れ、当然、筋肉も見えない。ステロイドが必要なんですか。ワーコーズはこう証言した。
「囚人服の上からでも筋肉はわかる」
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