ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード11=問題児ウォリアーの証言――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第164回
マクデビット弁護士はヘルウィグの発言を擁護するスタンスをとった。
――あなたは医療目的以外でのステロイドの使用が違法だということを知らなかったわけですね。
「ステロイドを使いはじめたのは1984年に“ミスター・ジョージア”コンテストに出場したときからです。違法との認識はありませんでした。使いはじめた理由はみんなと同じです。“隠し味”です。この肉体をつくり上げるためには正しいトレーニングと正しい食事が必要です。もともとの体質も大きな要素です。ステロイドはほんの“調味料”でしかない。オレは酒もタバコもやらない。生活のすべてを捧げ、大きな犠牲をはらい、この体ができあがるのです」
――ザホリアン医師との関係は?
「オレはザホリアン医師からステロイドを買ったことはない。テキサスの主治医に処方してもらっている」
――ビンス・マクマホンがあなたに「ステロイドを使え」といったことは?
「ビンスがオレに『ステロイドを使え』といったことはいちどもない。オレはWWEのインナー・サークル(心臓部)にいた人間。ビンスからそういう指令があれば、オレの耳にも入ったはずです。それはノーです」
ブレベッティ弁護士は、WWE所属選手(ヘルウィグはこの時点ではフリー)のステロイド使用はビンスあるいは団体サイドからの命令ではなく、あくまでもパーソナル・チョイス(個人の選択)であることを主張した。
――ここに1991年1月25日付の社内メモのコピーがあります。「薬事法の改正によりステロイドの所持と使用は違法となりました。薬剤を所持している選手は必ず処方せんの写しを携帯すること」と通知しています。
「そのメモを読んだおぼえはありません。オレは記憶力が悪いので」
それはブレベッティ弁護士が用意してきた“助け舟”だったが、ウォリアーの反応は鈍かった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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