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ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード18=ミシュラー裁判長の決断――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第171回

法廷 ニューヨーク州東地区とはブルックリン、クインズ、リッチモンド、ナッソー、サフォーク郡の5都市だが、ここまでの審理ではエミリー・ファインバーグ氏の「ビンスの専属ドライバーのジム・スチュワート氏がステロイドをナッソー・コロシアムに届けた」という証言以外、東地区での犯罪を示唆する具体的な情報(状況証拠)はなかった。まずこれを証明しなければ、この裁判が東地区のユニオンデール高等裁判所でおこなわれていることの適法性が崩れる、というのがミシュラー裁判長の判断だった。  公判3週めの月曜(7月18日)、ミシュラー裁判長はビンス、タイタン・スポーツ社の両被告に対する①と②の起訴を取り下げ、③共同謀議のみを争点とすることを発表した。ここから評決までの3日間は、陪審員を“観客”とした原告側と弁護側の“最終弁論マッチ”だった。  弁護側のブレベッティ弁護士は、この事件が「ハルク・ホーガンを利用して組み立てられた事件なき事件」と前置きしてから、検察側が召喚した証人たちの証言の信頼性のあやうさとその矛盾点をひとつずつ示していった。  ランディ・カーリー(ムーンドッグ・レックス)、トム・ジンク、テリー・シピンスキー(ウォーロード)、タリー・ブランチャード、リック・ルード、ケビン・ワーコーズ(ネイルズ)、ジム・ヘルウィグ(アルティメット・ウォリアー)、ジョン・ミントン(ビッグ・ジョン・スタッド)は、いずれもWWEとの契約以前、契約中、そして退団後もステロイドを使用し、その事実を認めた。  ジンク、ネイルズ、スタッドはこの裁判とは別件の民事訴訟で現在、WWEと係争中。ブレベッティ弁護士は、これらの証人たちがビンスに不利な証言をするための明らかなモチベーションがあった点を指摘した。
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ビンスの元秘書のエミリー・ファインバーグ氏は…
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