ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード20=Not Guilty無罪――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第173回
ファインバーグ氏の証言にやや不明瞭が点があったとしても、1989年4月から同年10月までのWWEの興行スケジュールとホーガンが出場した試合の記録をすべて調べればもっと具体的な事件のアウトラインが浮かび上がってきたかもしれないが、オシェー検事はなぜかそれをしなかった。また、ビンスの専属ドライバーのJ・スチュワート氏を証人として召喚しなかった点も不可解だった。
検察サイドの証人としてこの裁判に出廷した8人のプロレスラーのうちの6人が「ビンスにステロイドを使えと命令されたことはない。薬物の使用は個人の選択」と証言。「ビンスに(ステロイド使用を)命令された」と証言したランディ・カーリーとネイルスのふたりは、別件(の民事裁判)でWWEと係争中という事実も明らかになった。
オシェー検事は審理最終日の論告で「WWEは会社ぐるみで選手たちに薬物を供給した」と“選手たち”という複数形で事件を論じたが、結果的に立件できたのはホーガンの自宅への宅配便で発送したとされる2件だけだったことも検察側の主張をどこか説得力を欠くものにしていた。
7月22日午後4時、陪審員はビンスとタイタン・スポーツ社に対し「無罪」の評決をいい渡した。3週間、被告席で沈黙を守りつづけてきたビンスは「ヒューマニティーHumanity(人間の尊厳)を信じていた」と力強くコメントし、報道陣にほほ笑んだ――。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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