作家・樋口毅宏が引退表明!? 「作家なんて男子一生の仕事じゃない」
『ドルフィン・ソングを救え!』で俺はああいうことを書いて、オザケン大好き腐女子からネットで叩かれまくるんだが……。
何の話だっけ? 童貞文化な。ヤリまくっている奴の中にも「童貞」はあるよ。『ファイトクラブ』の地下闘技場で、自分は闘わないくせに拳を振り上げて熱狂している観客。『北国の帝王』で、走る鉄道の上で命を懸けて喧嘩をする、無賃乗車のホーボーと鬼車掌。みんな、みんな童貞だ。俺もきみも。
――でもプロレスって、ショウというか、八百長なんですよね? 何が面白いんですか?
樋口:じゃあ聞くが、おまえの人生は全部真剣勝負だったのか?
妥協や無気力試合はひとつもなかったのか?
痛い思いをしたくないのに技を受ける者の気持ちなんて少しも理解できないだろう?
先輩や上司や社長の顔を踏み付けてカネがもらえるなんて、そんな楽しい仕事が他にあるかよ。強くて楽しくて悲しいレスラーたち。嫌いになる理由が見つからないよ。
――ところで、本書の帯に「樋口毅宏引退作品」とありますが、これはどういったことなのでしょうか?
樋口:もう飽きたんだよ。作家なんて男子一生の仕事じゃねえよ。
テリー・ファンクはアマリロの風になったし、大仁田厚は「今度こそ本当! 俺は10,000パーセント復帰しない」と宣言した。俺も本作で文壇から足を洗う。
だけどな! ある日突然謎の覆面作家が現れるかもしれないぜ! 震えて待ってろ!
「引退」と銘打ち刊行された“最強のプロレス文学”『太陽がいっぱい』。今回「ある悪役レスラーの肖像」を期間限定公開!(https://nikkan-spa.jp/info/taiyo) プロレスの熱狂を知る人はもちろん、それを知らない人も、このアツい思いを感じてほしい。
【樋口毅宏】
ひぐちたけひろ●1971年、東京都豊島区雑司ヶ谷生まれ。出版社勤務ののち、2009年『さらば雑司ヶ谷』で作家デビュー。 2011年『民宿雪国』で第24回山本周五郎賞候補・第2回山田風太郎賞候補、 2012年『テロルのすべて』で第14回大藪春彦賞候補に。新潮新書『タモリ論』はベストセラーに。その他、著書に 『日本のセックス』『雑司ヶ谷R.I.P.』『二十五の瞳』『ルック・バック・イン・アンガー』『甘い復讐』『愛される資格』『ドルフィン・ソングを救え!』やサブカルコラム集『さよなら小沢健二』がある。本作『太陽がいっぱい』でテンカウントゴングを聞くことになった。
――樋口さんは「プロレスは童貞文化」と言いますが、どういった意味なのでしょうか。
樋口:だってよー、俺がプロレスを好きな理由って、やっぱり「暴力への憧れ」だろ。アイドルヲタが「◯◯ちゃんを応援したい!」っていうのとあんま変わんないんじゃない?
「童貞文化」って昭和のプロレスだけじゃないよ。例えば’80年代の『少年ジャンプ』。さっき言ったフリッパーズ・ギターだって、あれ全歌詞を書いていた小沢健二は当時女を知らなかったと俺は踏んでいるんだけど。
だから
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