更新日:2012年08月19日 13:47
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オシャレで人気 仮設住宅を訪問

各棟の間は砂利敷き。伊藤さんは「土の上に住むのがやっぱり安心する」と言っていた

 お話を伺っていると、どこから聞きつけたのか、同じ仮設住宅に住む”ご近所さん”が勝手に部屋に入ってきた。聞けば元々、同じ町内に住んでいた「本当のご近所さん」。顔馴染みの人を同じ棟に住まわすことによって、コミュニティーそのものを移転。住民のストレス軽減を目的にしているという。  実際、伊藤さんも、避難所暮らしの時はご近所さんと寄り添って寝起きをしていたのだが、その後、埼玉県川口市に住む娘さんの招きにより首都圏に一時避難。馴れない都会暮らしで、軽いうつ状態に陥ったそう。その時、近所の人々の支えがいかに大事か身に沁みたのだとか。 「みんな遠慮無しに部屋に入ってくるでしょ(笑) 都会の人には考えられないけど、田舎では当たり前なんですよ。震災前は気づかなかったけど、こうやってお菓子たべてお茶飲んで、ベラベラ喋ることが大切な時間だったんだなぁって」  しかし、この仮設住宅に住めるのは2年間。その後の生活はまだ決まっていない。元々住んでいた閖上地域は津波の危険があり、液状化で沈み、行政には居住不可と認定されてしまった。同じ場所にはもう住めない。 「2年経ってここを出ることになっても、ご近所さんが、寄り添って住めるのが理想です。代替地に移るとしても、なるべく閖上に近い場所に住めるように行政には考えてほしいですね」  集まってきた奥さん達にお菓子を振る舞う伊藤さん。するとすかさず他の奥さんがお茶を入れる。一気に部屋は笑いに包まれた。「あんたも食べな」といわれ、記者もお茶とお菓子を頂くことに。その後も、「初物の枝豆を茹でるから食べてけ」、「ついでにビール飲んできなさい」とおばあちゃん家に行ったような歓待を受けてしまった記者。  帰り際「また、遊びにおいで~」と言ってわざわざ通りまで出てきて、笑顔で手を振ってくれた伊藤さん。震災前の元気な日常が仮設住宅の一角で戻ろうとしている。 取材・文・撮影/遠藤修哉(本誌)
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