更新日:2017年11月30日 14:51
スポーツ

“レッスルマニア12”61分52秒の政権交代劇――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第224回(1996年編)

 ブレット、ショーンともにマラソン・マッチにおけるペース配分を意識してか、クロス・アームバー(逆十字固め)、フジワラ・アームバー(ワキ固め)といったふだんはあまり使わないジャパニーズ・スタイルの関節技を用意してきた。  33分過ぎ、ショーンのパーフェクトプレックス(フィッシャーマンズ・スープレックス)が観客のどよめきを誘った。36分過ぎ、ブレットがショルダースルーの体勢でショーンをトップロープごしにリング下に転落させ、場外の攻防ではショーンの背中をコーナーポストに打ちつけた。  ブレットもショーンも基本的なポジションはベビーフェースということなっていたが、観客はある場面ではブレットにブーイングを送り、またある場面では“レッツゴー・ブレット”を大合唱した。いっぽう、ショーンはできるだけ感情表現をセーブしながら闘っているようだった。  48分経過の時点でブレットが場外のショーンに向かってトペを放っていった。これはブレットがここぞという特別な試合にだけ使う“隠し技・その①”。リング内に戻るとブレットはこんどはジャーマン・スープレックス・ホールドでショーンを宙に舞わせた。この技もまた特別な試合でしか披露しない“隠し技・その②”ということになる。  ブレットはコーナーからのスーパープレックス(雪崩式ブレーンバスター)でショーンをキャンバスにたたきつけ、そこからシャープシューターを狙ったが、ショーンはこれをきっちりとブロック。ブレットが逆片エビ固めを決めるとショーンがロープに手を伸ばした。このシーンでなぜかブーイングが起きた。  57分過ぎ、ショーンがトップロープからのランディ・サベージ式エルボードロップにトライし、返す刀でサイド・スープレックスの体勢からのドクター・ボム、コーナーからのムーンサルト・アタックとふだんはあまり使わない大技をたてつづけに決めた。ブレットがカウント2でこれをクリアすると、こんどはここでなぜかブレットに対するブーイングが起きた。  ショーンがトップロープからのミサイルキックを狙うと、ブレットが下からマイケルズの両足をキャッチし、残り試合時間35秒のところでシャープシューターの体勢に入った。しかし、ショーンがギブアップの意思表示をしないまま60分タイムアップで試合は終了し、スコアは0-0のドロー。  ブレットはベルトを手にいったんはリングを下りようとしたが、ゴリラ・モンスーンWWE会長は“サドン・デス方式”での試合続行を要請。ブレットはだれにでもそれとわかる不快な表情で「なぜWHY?」とつぶやいたが、レフェリーのアール・ヘフナーは再試合のゴングを鳴らした。いまになってみると、ブレットとヘブナー上級レフェリーとの“確執”はこのあたりからはじまっていたのかもしれない。
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延長戦は1分51秒
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