ボーイズの友情:衝撃の“カーテンコール事件”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第226回(1996年編)
ケージ・マッチは30分強の耐久戦の末、十八番スウィート・チン・ミュージックでディーゼルをKOしたショーンが金網からのエスケープに成功。“バットマンとロビンの関係”といわれたディーゼルとの闘いのドラマに終止符を打つとともにWWE世界王座防衛を果たした。
衝撃のシーンは試合終了直後に起きた。それはショーン、ディーゼル、ラモン、トリプルHの4人のプライベート・パーティーだった。まず、メインイベントを闘い終えたばかりのショーンとディーゼルがおたがいの健闘をたたえ合い握手。それから数秒後、同夜のセミファイナルでシングルマッチで対戦したばかりのラモンとトリプルHもリングに上がってきた。
ショーン、ディーゼル、ラモン、HHHの4人が無言のままおたがいにハグをするとガーデンのアリーナ席から4階席までが自然発生的な拍手のうずにすっぽりと包まれた。クリック=派閥の4人はきわめてアドリブ的にカーテンコールを演出した。
もちろん、この“場面”はWWEの背広組にとってはまったく想定外のワンシーンだったことはいうまでもない。スーパースターの4人がまだリング上にいるにもかかわらず、いきなり照明が落ちた。バックステージでだれかがライティングのスイッチを切ってしまったことは明らかだった。観客席からどよめきが起きたが、それでも4人はハグをやめなかった。
複線はたしかにあった。ラモン対トリプルHのシングルマッチ終了後、ラモンがリングアナウンサーのマイクを手にした。ラモンがトレードマークのスパニッシュ系アクセントで「バッドガイからみなさんにグッバイ……」といいかけた瞬間、なぜかマイクの音源が切れた。しかし、この時点でバックステージでちいさなパニック現象が起こっていたことに気づいた観客はほとんどいなかった。
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