「うな子」動画のクリエーターは“確信犯”か?【鴻上尚史】
― 週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―
この時代だから、たぶん、削除になるんじゃないかなあ、そうなったら嫌だなあと思っていた鹿児島県志布志市制作のうなぎPR動画が、数十件の抗議電話やメールを受けて、市の判断で削除されました。んで、市長のお詫び文まで発表されました。
見ましたあ? 男性がプールでスクール水着のうな子と出会うところから物語は始まります。この「うな子」ちゃんは、思い詰めた潤んだ目で、「養って」と一言言うのです。こんな目で言われたら従うしかないわけで、この男性はプールサイドにテントを立てて上げたり、天然水をプールに引いたりしたわけです。
つまりまあ、ずっと彼女は水着なわけですね。
で、1年たってみると、彼女は「うなぎ」だったと分かるのです。ラストカットは、また新しい「うな子」が現れて、「養って」と言うのです。
なんかねえ、この動画作った人は、もう確信犯的に「美少女飼育モノじゃないか」「女性差別だろ」「行政がこんなの創っていいと思っているのか」と突っ込まれると分かっていたんじゃないかと思います。
ああ、「確信犯」という単語もめんどくさいことになっています。
本来は、「自分の行動の宗教的や政治的な正しさを確信して行われる犯罪を指す法律用語」なわけで、じつは、「こうやったら、こうなるだろうなあと分かってやった場合」は、法律上は「故意犯」と呼ばれます。
で、この指摘がネットで広がったわけです。「間髪(カンパツ)を入れず」なんかと同じです。ちょっと目立つ誤用を知ると、とにかく気になって、それだけを激しく攻撃して、それで書き手の水準を判断する、というパターンです。
この「うな子」のクリエーターが、「うなぎを養うのは美少女を養うのとまったく同じである。いや、それが、うなぎの養殖の本来の姿である。うなぎの稚魚は美少女そのものである」という宗教的信念を持ってこの作品を創ったのなら、間違いなく「確信犯」です。
けれど、「この作品、もめるだろうなあ。でも、もめるぐらいが話題になるんだよなあ。無視されるのが一番、意味がないし」と思って創ったのなら、「故意犯」なのです。
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『この世界はあなたが思うよりはるかに広い』 本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録
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