更新日:2017年11月22日 14:56
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「うな子」動画のクリエーターは“確信犯”か?【鴻上尚史】

ネット的厳密な正しさの末に

 それでね、ネットで「この作者は確信犯として」と書くと、必ず「誤用である。この程度の日本語も知らないで文章を書いて欲しくない」と突っ込む人が現れるんだけど、でもさあ、日常レベルで「故意犯」って使うかあ?ということなのですよ。使わないよねえ。だって、語感としては「もめるという確信を持って行動したから、確信犯」が一番、ピタッと来るのですよ。  その実感を尊重してはいけないとなると、「間(カン)、髪(ハツ)を入れず」みたいに「本当はそうかもしんないけど、こっちは『カンパツをいれず』で身に染みついてるのに、それがダメって言うんなら、もう使わないよお」となる可能性がどんどん高くなると思うのです。そして、ネット的厳密な「正しさ」で、日常的に使っていた言葉が抹殺されていくのです。  で、話は戻って、このクリエーター達は「確信犯」だったと思うのですが、それにしても、市長がお詫び文を出すわけですから、ちょっと計算外だったかもしれません。まさか市長に「市長、これ、たぶん、もめて削除になります。その時はお詫び文、頼みます」なんて言えないと思いますからね。  市長は、動画の意図について「志布志の天然水でうなぎを大切に育てていること、栄養や休息を十分に与えてストレスのかからない環境で大切に育てていることをお伝えしたかったものです」と説明し、しかし、「引き続き動画を配信することにより、視聴者の皆様に更に不愉快な思いをさせてしまうだけでなく、これまで志布志市へふるさと納税をしていただいた寄附者の皆様や地元市民の皆様をはじめとする関係者の皆様に及ぼす影響を考え」動画を停止するとし、謝罪しました。  なんかねえ、最後に次の「うな子」が来るんですけどね、これが、いがぐり頭の「うな男」でさ、声変わりした低音ボイスで「養って」って海水パンツ姿で言うだけでも、この作品の印象はずいぶん変わったと思うのですよ。確信犯なら、それぐらいの「予防線」を張っててもよかったかと老婆心ながら。
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