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相席居酒屋の隆盛で加速する「一億総水商売化」時代[コラム二スト木村和久]

 素人系の商売がウケるなら、店にいるコを客にしたらどうか? そんなわけで、お店に行くと、いい素人女がいて、一緒に飲めるコンセプトの「ラウンジ」を作りだした。でも、実際はいくばくかのお金を、客を装った女性に渡しているのが実情だった。しかも高いワインをガバガバ注文して、全部男性客が払うシステムだから、たまりません。素人と飲めると期待した客は、キャバクラぐらいお金を取られてあんぐりだった。  散々飲んでおきながら、お見送りはなし。「私たちホステスじゃないし。ゲストよ。皆さん、勝手にお帰りあそばせ」と来たもんだ。「ラウンジ」はただのやらずぼったくりと敬遠気味になっていた昨今、2~3年前から、彗星のように現れたのが、相席系居酒屋だ。  相席系居酒屋はすでに何社も参入しているが、営業的には風営法の適用は受けていない、ただの居酒屋である。だから店は一切、客のプライベートや金銭的な面には関与しない。これがウケたのは、明朗会計システムである。男性が女性の分まで払うが、1時間3000円程度のお値ごろ価格で運営している。客は2時間いても6000円で、女と食べ飲み放題なんて、夢のようだと喜ぶ。運営側も居酒屋営業で、ひとり5000~6000円払ってもらえるならありがたいとなり、双方ウィンウィン効果が働いたのだ。  じゃ具体的に、相席系の居酒屋で美味しいことはあるのか。実際何度か男2人で行ったけど、おやじには辛い場所だった。双方「汚いオヤジ」と「単なるブス」と、心の中で評価し、4すくみ状態だった。ほぼ会話なしで、4人がスマホいじってたからね。  でも若者なら、合コン感覚で楽しく飲めるのではないか。そのうち、ほんの数%であるが、いいこともあるでしょう。キャバクラ全盛期で、客の性交渉達成率は5%と言われていた。20人に1人が栄光を手に入れられたのだ。相席系居酒屋でも、誰かが「あの店チョロイぜ、速攻持ち帰りだぜ」と武勇伝を盛って語れば、噂が噂を呼び、大入り満員になる。噂マーケットとはそういうものだ。  相席系居酒屋では、別にナンパできなくてもいい。噂の店に行って、合コンもどきのことをすれば、充分満足である。元々安いから、ダメなら、飲みや食いに走ればいい。 「あとはマッチングに期待だね」と言って待ってれば、たまにいいこともあるであろう。  現在は、発展形としてイタリアン系相席レストランがあるように、ハイクラスの層を狙って、マーケットを拡大しているようだ。個人的には、貧乏系を狙った「相席立ち食いそば屋」が欲しいって、もともと相席じゃん!
木村和久

木村和久

 結局のところ、女性は相席の店に入った段階で「男に酒と飯を、奢ってもらっている」わけで、その負い目で、しぶしぶ客と会話をするのだ。これが出会い喫茶だと、喋ることがないから即「交渉」に行きがち。ある意味、夢がない。相席系居酒屋は「口説きはなし。飲むだけだよ~」みたいな女性も混じっての、玉石混交が楽しいわけで、現状でいいと思う。どうせ数年したら、別の業態が現れるわけだし。今のうちに行って、相席系居酒屋って面白かったねと、青春のアルバムに貼ろうじゃありませんか。 ■木村和久(きむらかずひさ)■ トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦
トレンドを読み解くコラムニストとして数々のベストセラーを上梓。ゴルフやキャバクラにも通じる、大人の遊び人。現在は日本株を中心としたデイトレードにも挑戦。著書に『50歳からのかろやか人生』
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