セクハラ&パワハラ、さらにハニトラ30年史[コラムニスト木村和久]
―[木村和久の「オヤ充のススメ」]―
― 木村和久の「オヤ充のススメ」その209 ―
最近のセクハラは待ったなしですね。突然アウトになるのが怖いです。行為そのものは、セクハラをした方が悪いに決まっています。けど、この前まではアリだったのに、急にアウトになるのは加害者側として見ると、不条理感が漂うところです。
東西冷戦でいえば、昨日まで東ドイツに行けたのに、今日からダメってまさに「ベルリンの壁」状態ですねん。被害者側が犯罪を誘発させる場合もあります。例えば、交通事故の場合、どっちが何割悪いかって、比率を決めますよね。9割加害者が悪くても、1割ぐらい被害者にも「安全確認を怠る」などのミスがあるのです。それと同様に、一概にセクハラと言っても、被害者側も「報告義務を怠る」とか「セクハラを受けると分かっていて会う」とかね。被害者側の心の隙を考えるのも、大事じゃないですか。
というわけで、過去に30年間、マスコミ関係に携わり、セクハラやパワハラなどを見聞きしました。そこでの出来事をもとに、セクハラ意識の流れを辿ってみたいと思います。
まずはグラビア撮影の件。最近大御所のカメラマンが、セクハラをしていたと過去の仕事を非難されています。確かに昭和のグラビア撮影は「ノリに任せる」部分がありました。「カメラマンはノセて、いかに脱がせるかが腕の見せ所」と、そもそもが勘違いをしていたのです。
脱がせる相手は事務所に属していない、プータローのようなコでした。「最後はギャラ弾むから」で、双方納得する場合もあったのです。
これが事務所管理のタレントさんはマネジャーがガードして、怪しげなポーズをさせられると、ストップがかかることも。細かい部分は、事務所と出版社の力関係で決まります。弱小プロダクションだと、逆にタレントを裏切ることもあります。カメラマンがノリで脱がせると、マネージャーがタレントに「あとで編集チェックをするから大丈夫、ここはノリノリでやってよ」なんてことに、なります。その後は、どうなったか知りません。当時は売れれば、丸く収まった、そういう時代でしたね。
こう言う話もあります。
雑誌のキャバクラ嬢紹介コーナー。人気キャバクラ嬢がセクシーポーズをしたら、パンチラショットゲットとなりました。これは美味しいと思って出版社が掲載したら、そのキャバクラ店から電話が。
「うちの店のコが、パンチラを載せられて落ち込んで、店を辞めると言っている」
出版社の担当は店に謝りに行きます。そこでキャバクラ側が慰謝料を請求すると恐喝になるので、それはしない。けど店は怒っている。落とし所は、謝罪の意味を込めて、再度掲載記事を書くとか。そこらへんで、話が落ち着きます。この場合、どっちがセクハラかなあ? パンチラを載せた編集者がセクハラなのか? 再度掲載を求めたキャバクラ店がパワハラか? よくわかりませんね。
グラビア撮影で厄介なのは、優柔不断なコです。30年も前の話です。雑誌の取材で、伊豆の下田にロケに行きました。企画は街とリゾートの紹介というありふれた記事です。しかし、そこでトラブルが起きたのです。素人系水着タレントと撮影隊数名が前泊して、飲み会をしました。特別何をしたわけでもなく、女性には触りもせずに、ただ歓談していただけ。ところが女性は、その騒々しい宴会が嫌だったみたいで、夜の10時ぐらいに事務所の社長に「拉致されて、脱がされそう」と、電話したのです。
こちら側としては、寝耳に水です。新人ライターとして一部始終を見てましたが、落ち度があったようには見えません。それから、夜中の2時にぐらいに、東京から元暴走族のヘッドだったという事務所の社長が来て、まくしたてるし。怖かったっす。こっちも編集部のデスクが飛んで来て、潔白を証明するし。
結果、そのモデル嬢がプレッシャーを過大に受けるタイプだと判明し、社長も納得して、事は収まりました。
あれは何だったのか? 無事仕事は終わったけど。何もしていないのに、監禁されていると言われても。その事件以降、理解しがたい存在には、近づかないようにしています。
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