大統領選後のアメリカは憎悪によって引き裂かれる【国際政治学者・三浦瑠麗氏インタビュー】
――オバマ大統領も憂慮していたが、トランプ氏は大統領選そのものを「仕組まれている」と批判し、自身が勝ったときは選挙結果を「受け入れる」が、そうでなければ「法的な異議申し立てを行う権利を取っておく」とも話している。仮にトランプ氏が負ければ、アメリカ社会の「分断」がさらに加速する恐れもあるが。
三浦:クリントン氏に「嫌な女だ(nasty woman)」と言い放った最後のテレビ討論の翌日、慈善晩餐会に同席した2人のスピーチは、相手へのおちょくりが半分、自虐ネタが半分と、茶目っ気とヒリヒリした言葉が入り混じった大人の余裕を感じさせるものでした。トランプ氏はディナーの前、クリントン氏に近づくと『あなたは粘り強く才能がある女性だ』『大変な選挙戦だがそれと同じくらい素晴らしい経験だった』と話しています。クリントン氏はそれに対し『そうよ、ドナルド。選挙結果がどう出ようとその後一緒に協力し合わなくてはね』と返しています。彼らが第一級の人物であることに疑いはなく、テレビ討論はいわばチャンピオン同士のスパーリングのようなもの。ところが、憎しみに駆られたメディアや学者には、そこがまったく見えていない。トランプ氏とクリントン氏は今でこそ憎しみ合っているけど、長年の知り合いでもあり、実は大人として振舞える関係。選挙戦がこの2人の関係を醜くしているのであり、はからずもメディアがこれに加担しているのです。どっちもどっち、というふうに冷静な意見を述べる人はおらず、トランプ氏は右にシフトし、クリントン氏は左に傾き、これでは戦いの後に憎しみしか残らない。皆が敵対候補を悪魔のように言うけれど、そんなわけないですし、メディアの中傷合戦とそれを面白おかしく消費する人々が失ったものは大きい……。本選挙後のアメリカは、こうした憎悪によって引き裂かれるでしょうね。
「Brexit」(英国のEU離脱)を思い出してほしい。国民投票前は「残留派」が圧倒的優位とみられていたものの、蓋を開けてみたら「離脱派」が勝利した。これに対して、今回の大統領選における下馬評は五分五分だ。テレビや新聞などアメリカのメディアでクリントン氏の「支持」を表明している媒体は425。一方、トランプ氏を支持するメディアは12にとどまっている。にもかかわらず、一時、支持率が逆転するほどだったトランプ氏の人気は、アメリカ社会が大きな変革期を迎えている証なのだろう。11の激戦州(選挙人数計132)のうち「最大の票田」と言われるフロリダ(29)とノースカロライナ(15)の戦いに注目が集まっているが、果たして、アメリカは新大統領誕生を機にどこに向かって走り始めるのか? 決選の日を見届けたい。<取材・文/日刊SPA!取材班>
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