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大統領選後のアメリカは憎悪によって引き裂かれる【国際政治学者・三浦瑠麗氏インタビュー】

「史上最低の大統領選」「嫌われ者同士の醜聞合戦」などと揶揄されてきた今回のアメリカ大統領選。民主党候補、ヒラリー・クリントン前国務長官が、終盤戦に飛び出した共和党候補、ドナルド・トランプ氏の「女性蔑視発言」を追い風に逃げ切りそうな勢いだったが、クリントン氏の「メール問題」が再燃したことで最後の最後までわからない展開となっている。

今回のアメリカ大統領選をメディアはどう報じてきたのか 写真/日刊SPA!

 政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の調査によると、11月4日時点でクリントン氏の支持率が46.6%あったのに対し、トランプ氏は44.9%。選挙人団の獲得予想も、選挙分析サイト「サバト・クリスタ ルボール」を見ると、クリントン氏陣営が「352人」獲ると予測していた数字が、今月に入って「293人」と急減している。

 実際にトランプ氏に投票すると決めていても、支持を口にしない「隠れトランピスト」も数多く存在すると見られており、「人種差別」「女性蔑視発言」「納税申告書の非公開」など、これまで枚挙に暇がないほど多くの問題を指摘されてきたにもかかわらず、このトランプ氏の強さには驚かされるばかりだ。

 日本の報道では、トランプ氏の暴言ばかりがクローズアップされてきたため、まさかトランプ氏が勝つことはないだろう……と、いまだ思い込んでいる人も多いかもしれないが、共和党候補者レースが始まった当初から“イロモノ”扱いだった彼が、なぜ、これほどまでに熱狂的な支持を受け、それと同時に、蛇蝎のごとく忌み嫌われているのか? 11月8日に迫った本選挙を前に、国際政治学者の三浦瑠麗さんに話を聞いた。

――日本の報道だけ見ていると、「トランプ現象」を読み解けない点も多いが。

三浦:日本では、トランプ氏の支持層はもっぱら低学歴でブルーカラーの白人層と報じていましたが、まず、これ自体が見誤っている。トランプ旋風が吹き始めた当初、私自身も“トンデモ候補”と思っていましたが、実際にアメリカ南部を訪れて、カーディーラーや会計事務所の経営者など独立しているビジネスマンに話を聞くと、「トランプはいいよね」と思いのほか評価が高かったのです。ただ、それと同時に「経営者しかやったことがないトランプは、議会と妥協するのは難しい。大統領としてはあまり期待できない」とも言っていた。つまり、彼らトランプ氏の支持者たちは、非常に冷静で客観的な評価を下していたのです。それにもかかわらず、アメリカのメディアがこうした支持層を見下し、断罪したことで、トランプ現象の深層を見極める視点が失われてしまった。移民や難民への誹謗中傷や保護主義的な暴言ばかりを報じる一方で、彼の経済政策についてはほとんど見てこなかったというのがいい例です。アメリカでは『ウォール・ストリート・ジャーナル』が、トランプ氏とクリントン氏の法人税改革を比較する特集を組んでいましたが、日本では『日経新聞』が記事を出したくらい……。問題なのは、市民が(主張している政策に関する)データに辿りつきたいと思っても、トランプ氏の言うことはすべて暴言というレッテル貼りをしたことで、あたかもトランプ氏に経済政策や戦略がないかのような伝わり方になってしまった……。

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トランプ氏の強さの源泉はどこにあるのか

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