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クスリ、酒に頼る!? 寝付けぬ夜のお話【鴻上尚史】

クスリに勝る初日前夜の緊張

 なんだかもう、嬉しくなって、もらったクスリの名前を覚えて、今度は僕のかかりつけのお医者さんに処方を頼みました。  これがね、寝られるのよ。実に寝られるの。気持ちいいぐらいに8時間とか、ぐっと寝られて快適なのね。 「クスリを飲むことは習慣化しませんか?」とお医者さんに聞くと「習慣化します。気をつけて下さい」と真顔で言われました。 「でもまあ、私は寝酒よりはいいと思っているんですけどね」お医者さんは付け加えました。 「一か月分しかだしません。欲しくなったら、また、病院に来て下さい」  で、毎晩、飲みながら快適な睡眠を獲得しました。ただ、初日前日は、クスリを飲んでも3時間で目が覚めて、それ以上は寝られませんでした。おお、初日前の緊張はクスリを打ち負かすんだと妙に感動しました。  初日が無事開いて、次の日から習慣化はダメだと思って飲むのをやめました。さっそく、寝られないまま、フトンの中でうんうんしました。寝られないと、いろんなことが浮かんできます。ぶっちゃけて言うと、さまざまなアイデアが浮かび、「あっ、あそこのシーン、こんな風に変えよう」とか「あれ、やろう」とか次から次へと思いつくのです。  睡眠導入剤を飲まないと、そういうご褒美があるのです。その代わり、何時間も寝られずに、うんうん唸ります。  飲むと、さっと寝られるので、何も浮かびません。気持ちよい睡眠だけが、唯一のご褒美です。  厚生労働省の2015年国民健康・栄養調査で、成人男女の平均睡眠が「6時間未満」の人が39.5%だという発表が最近ありました。  4割が6時間寝てないのです。 「6時間以上7時間未満」は34.1%で、十分な時間寝られない理由として、男性は「仕事」「健康状態」、女性は「健康状態」「家事」「仕事」を挙げています。  僕は7時間を切ると、思考が厳密じゃなくなると体験的に知っています。普通に起きて動けても、思考が雑になるのです。ですから、何があっても7時間は寝ようとしてます。  あなたは寝られてますか?
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この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録





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