漫画研究会に舞い降りた天使?悪魔? 次々と男を乗り換える女【サークルクラッシュ事件ファイル③】
5月22日(水)「部室にて」
「若松先輩、進撃の6話観ました!? ミカサがすっごい良かったですよね!」
「あー、『死体が喋れるの?』ってやつな。カッコいいよな」(正しくは「死体がどうやって喋るの?」)
「さすが先輩!分かってくれますか! それから私、昨日ね……」
いつものように里奈は自分語りを始める。漫研部員の男たちの一部はおかしな子だなと思いつつも、可愛いから許していた。
一方、女子部員たちはそんな里奈のことをあまり良く思っておらず、里奈からは距離を置いていた。それでも部室ではみんなそれぞれ、それなりに楽しくやっていた。おしゃべりをする者、絵を描く者、ゲームをやる者や漫画を読む者などなど。
このときはまだクラッシュが起こるということはなかった。部室のゆるい雰囲気の中、おのおのが勝手に好きなことをやっていたので、明確な対立もなく集まりが成り立っていた。
そんな中、若松は個人的にも里奈と喋るようになっていた。お互いのpixivの絵を見せ合い、LINEで会話などしていた。お絵描きチャット(リアルタイムでネット上の一つのキャンパスを共有し、合同で絵を描けるサービス)をしたこともあった。
若松は里奈の絵のタッチや色遣いなどにセンスを感じていた。そしてそんな里奈の話を聞くたびに、若松は里奈のことをどんどん好きになっていった。そして、6月のある日。
6月某日「Skypeのチャットにて」
若松:あのさ
里奈:なんですか?
若松:里奈ちゃんの書く絵を見てると、正直嫉妬してしまう自分がいるんだ。
里奈:ええっ
若松:タッチ、構図、それにパースの取り方、全部が俺にないものだから
里奈:そんなことないですよ!せんぱいの絵の方がPVも多いし、全然です!
若松:そういう事じゃないだ。俺は君の絵を見て、君の事が気になって仕方なくなってしまった。君が読んできた本、見てきた映画、そして会ってきた人、それらが気になってしまうんだ。君の見てる世界が知りたくなった。
里奈:そんなおおげさなもんじゃないですよぉ…
若松:俺は君の感性が好きなんだ。
里奈:うぅ…
若松:俺と付き合ってほしい。君の事をもっと教えてください
しばしチャットが止まる。「里奈さんが入力中です」の表示が点いては消える。
里奈:こんな私で良ければ、よろしくお願いします(ペコリ
若松:うん、ありがとう。
若松はモニターの前で声を出さずに両の腕をおもいっきり振りあげた。
こうして、里奈と若松は付き合うことになった。
最初こそ、里奈の提案で美術館にデートに行くなどしてうまくいっているように思われた。自分と同じく絵を描いている若松に対して、里奈は「同志」のような感覚でいた。
しかし、次第にその綻びは明らかになっていった。
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