更新日:2017年02月09日 16:21
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実は「乱発」ではないトランプ大統領令 中国の為替操作国指定はあるか?

 とはいえ、トランプ大統領が次々と署名している大統領令や大統領覚書が議会で覆される可能性は小さそうだ。カルフォルニア州弁護士で保守系言論人としても知られるケント・ギルバート氏が話す。 「入国禁止措置は宗教的差別の問題が絡むのでどうなるかわかりませんが、そのほかに対する反発は小さい。というのも、入国禁止措置に関するロイターの世論調査は賛成が49%・反対が41%で、思いのほか支持する人が多いと報じられています。一見、反発の大きい大統領令でこれだけの数字なのですから、そのほかの大統領令に対する支持率は優に50%を超えるのは間違いありません。トランプ氏の掲げる政策に対する支持率は、日本人が思っている以上に高い。それを議会で簡単に覆すとは思えません」  そもそも、トランプ大統領は突飛な政策を実行に移しているわけでもない。 「トランプ氏が大統領選終盤に題した『アメリカ有権者に対する契約』には、ワシントンの腐敗と利権に対する6つの政策、労働者を守る7つの行動、安全と法の支配を復活させる5つの行動がありましたが、そのなかで議会にかけずに実行できるものを、順々に大統領令で実行に移しているだけ。その点では、トランプ氏は非常に“まじめ”な大統領(笑)。なぜなら、これまでの大統領は選挙期間中に掲げた公約を、大統領就任後にはあっさりと反故にすることも多かった。オバマ氏も2008年の民主党大統領予備選挙期間中から『新たな自由貿易協定は結ばない』と公言し、NAFTAからの離脱にも言及していた。自由貿易反対の労働組合の支持が不可欠だったからです。ところが、ご存じのとおり後にTPP推進に転じています。過去の大統領の方針転換を考えれば、トランプ氏は誠実だと考えている有権者は多いでしょう」(中岡氏)  なお、「アメリカ有権者に対する契約」のなかで、議会を通さず、大統領令で実行できると見られているのは、「労働者を守る7つの行動」の3番目に記されている「財務長官に中国を為替操作国に指定させる」というもの。トランプ氏の行動力を考えれば、すぐに署名してもおかしくなさそうだが、現在のところ“口先介入”のみだ。  実際に為替操作国に指定する際には議会の承認が必要だが、「財務長官に指定させる」ところまでは、大統領令で事足りる。当然、行政命令である以上、財務長官は拒否できまい。果たして、再び伝家の宝刀を抜くのはいつのことか? トランプ氏から目が離せない。 取材・文/池垣完(本誌)
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