実は「乱発」ではないトランプ大統領令 中国の為替操作国指定はあるか?
「トランプ大統領が大統領令を乱発している」としきりに報じられている。1月20日の就任式後にTPP離脱に関する大統領令を出して以降、メキシコからの不法移民の流入を防ぐための壁建設、カナダから原油を運ぶパイプラインの建設、オバマケア(医療保険制度改革)の撤廃、難民受け入れ凍結とイスラム圏7か国の入国禁止など、すべてを議会に諮ることなく大統領権限で実行してしまっているのだから無理もない。
だが、実はこの認識は誤りだ。アメリカ政治思想の研究を行う東洋英和女学院大学大学院客員教授にしてジャーナリストの中岡望氏が解説する。
「日本のメディアはすべて一緒くたにして『大統領令』と報じていますが、今(2月8日時点)ホワイトハウスのウェブサイトに掲載されているのは8つだけ。これには、TPP撤退やメキシコ国境での壁建設、原油を運ぶパイプラインの建設などに関する“大統領令”は入っていません。なぜなら、これらはいずれも大統領令(Exective Order)ではなく、『大統領覚書(Presidential Memorandum)』という異なる大統領決定(Presidential Actions)なのです。この大統領覚書のほうが多く、12件に達しています」
どちらかというと、「大統領覚書を乱発している」といったほうが正しいだろう。というのも、2週間程度で8件という大統領令の数も、決して多くはないのだ。
連邦官報事務局の記録をチェックしてみると、前任のオバマ氏は大統領に就任した2009年1月20日の翌日に13489号大統領令に署名した後、1月30日までに9件の大統領令に署名している。その最初の大統領令は「自分の個人情報の会議を禁止する」ためのもの。「実はアメリカ人ではない」という陰謀論が渦巻いていたことに対抗する措置だった。
オバマ氏が署名した大統領令のなかには、前任のブッシュ政権が司法手続きを経ずにテロ容疑者を収容して国際的な批判を浴びた「キューバのグアンタナモ米海軍基地にある収容所を1年以内に閉鎖する」という大統領令も含まれている。就任直後からいくつもの大統領令に署名することだけでなく、「オバマケアの撤廃」といった前政権の政策を転換させる大統領令を出すことも決して珍しいことではないのだ。
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