更新日:2022年08月23日 15:46
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核シェルター、スターリン建築…ソ連時代の遺構はロシアにどれだけ残っているのか【現地フォトレポート】

住宅街の核シェルター「バンカー42」

 ソ連時代から冷戦時代にかけて、多くの核シェルターがロシアにつくられたという。最高機密のため、その数や位置は当然不明だが、その中で唯一、一般公開された核シェルターがある。モスクワ市内の住宅地にある「バンカー42」だ。住宅街の真ん中に出入り口があるが、近隣住民は「その存在に全く気がつかなかった」という。 バンカー42の内部通路 バンカー42の内部通路。ソ連の有名な心理学者の助言で、壁は全て暗い赤色で塗装されている。この色だと長期間にわたって閉鎖空間にいても精神が不安定にならないのだという。地下65mの深さにある。 会議室 このバンカー42内には会議室もある。すぐ近くを地下鉄が通っているため、走行音が響き、壁がかすかに振動していた。 静粛に ソ連政府が作成したポスター。「静粛に!」と書いてある。当時は秩序維持を目的に街中に多く貼られていたらしい。 メインの会議室 こちらはメインの作戦会議室。実際に使用されたのは過去に一度のみ、1962年の冷戦時にアメリカとの間に発生したキューバ危機(ソ連がアメリカの近くのキューバに核ミサイルを配備したことにより生じた核戦争危機)の際。この部屋から、敵対していたアメリカへ唯一の連絡手段である電話が繋がれた宿泊施設 バンカー42内には宿泊場も見受けられる。こちらも実際に使用されたのは過去に一度のみ。前述のキューバ危機の際だ。

現在のロシアは資本主義と共産主義が入り交じる特異な国

 今回ロシアを訪れ、改めて気付いたことは、当時禁止されていたはずの西側商品が街中にも浸透しつつあることだ。たとえば、道路にはベンツやポルシェが走り、女性はプラダなどのブランドバッグを持ち闊歩する。マクドナルドなどのファストフード店なども見受けられた。  とはいえ、ロシアには今もなお共産主義の遺構が数多く残されている。その絶妙なバランスを非常に興味深く感じた。現在のロシアは西側の資本主義と東側の共産主義が混じった、世界でも類をみない国だと言えよう。 【沢田泰造】 写真家。共産主義国や災害地の撮影を得意とし、国内外のメディアに写真を寄稿。 <取材・撮影/沢田泰造>
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