“サマースラム99”はミネソタ狂騒曲――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第315回(1999年編)
毎週月曜夜の連続ドラマ“ロウ・イズ・ウォー”には「意味不明の高視聴率をはじき出す怪物番組」というレッテルが貼られていた。
インディアナ大学の特別調査委員会が発表した研究・統計データによれば、1998年7月から1999年7月までの1年間の“ロウ”の番組内で(1)出演者が画面上で中指を突き立てたシーンは全157回(2)出演者がみずからの股間を指さして“サック・イット(しゃぶれ)”と叫んだシーンは全434回(3)出演者がみずからの生殖器に手を押しあてたシーンは全1658回。
ストーンコールドがふた言めには口にする“アスAss(ケツ)”、ビンス・マクマホガリングに登場するたびに観客が大合唱する“アスホールAsshole(ケツの穴野郎)”は、いずれもテレビの画面上では“ピー音”が発生するダーティー・ワード。WWEは狙ってそういう場面を演出していた。
「メディアはオレを(政界の)ツラ汚しというが、オレはプロレスラーだ。プロレスに誇りを持っている。誇りを持って、きょうここに立っている」
リングアナウンサーからマイクを奪いとったベンチュラは、リング上でこう叫んだ。ターゲット・センターの外では知事の“プロレス活動”に反対する市民グループが大規模な抗議デモをおこなっていた。資本主義的な市場価値は高いけれど、民主主義的なステータスは低い。それがアメリカにおけるプロレスというジャンルのポジションである。
“サマースラム”のメインイベントは、特別レフェリーのベンチュラが裁いた“ストーンコールド”スティーブ・オースチン対トリプルH対マンカインドのWWE世界ヘビー級選手権“トリプル・スレット・マッチ”。
トリプルHがストーンコールドに十八番ペディグリーを決め、カバーの体勢に入ろうとしたところで、すぐよこからマンカインドがダブルアーム式DDTでトリプルHをKO。
マンカインドがストーンコールドからたなぼた式のフォールをスコアし、WWE世界ヘビー級王座を奪回。ベンチュラ・レフェリーがキャンバスを3回たたき、マンカインドの勝利をコールしたシーンで“サマースラム/ミネソタ狂奏曲”はジ・エンドとなった。
ジェシー“ザ・ボディー”ベンチュラが約16分間の“ゲスト出演”で手にした10万ドルのギャラは、ベンシュラ知事自身の手で全額、チャリティーに寄付された。ベンチュラは「州知事だって日曜は休みなんだぜ」とコメント。久しぶりのリングの空気を満喫したのだった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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