人間椅子・和嶋慎治の『イカ天』バンドブーム後の暗黒時代――売れない時代に経験したお金がない怖さ
――本書は「弘前編」「大学編」「暗黒編」「現在から未来へ」という4つの章から構成されています。
和嶋:どの章にも思い入れはありますが、なかでも「暗黒編」は重要な章だと捉えています。多くの人々から忘れられていた時期、普通に曲づくりをして、大した悩みもないまま過ごし、自然と現在の状況になったわけではない。暗黒時代というくらいですから、実際、苦しかったんですよね。そこで自分はどんなことを思い、どんなふうにもがいていたかはちゃんと書きたかった。この本の打診を最初にいただいたときから、そのあたりのことは包み隠さず書こうと決めていました。
――お付き合いしていた女性と別れたあと、未練もあって、少し付きまとうようなことをしてしまった経験まで告白されています。
和嶋:ストーカー認定寸前ですよね。もちろん、そうした自分の行為を肯定してもらいたくて書いたわけではありません。絶対にしてはならないことだ、という意味を込めて記しました。貧乏が理由のすべてではないでしょうが、人間、追い詰められるとここまでしてしまうんだ。それはとても怖いことなんだ。そうなってはならない……ということを伝えたかったんです。
――貧すれば鈍する、でしょうか。
和嶋:鈍することもあるでしょう。他者の気持ちを慮ることができなくなってしまう。そうならないためにも、ちゃんと働いて、稼ぐことって大事なんですよ。お金によって、人間の本質が浮かび上がってくる気がします。いい面も悪い面も。汗水たらして稼いだお金ならきれいなものですが、他人からかすめ取ったものは……ね。怖いものだな、とつくづく思います。
――お金は怖いですか。
和嶋:怖いですね。と同時に、とても素晴らしいものだとも思います。別に贅沢したいわけじゃないし、お金がすべてではない。でも、ギリギリやりたいことができる程度に稼ぐことができれば、それだけで精神的に自由になれるところがありますから。
『屈折くん』 人間椅子の中心人物、和嶋慎治による初の自伝!! 幼少期からバンド結成、現在までを明かす!! |
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