ビンスのスポーツ・エンターテインメント宣言――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第326回(2000年編)
“ストーンコールド”スティーブ・オースチン、ザ・ロック、トリプルHという3人の主人公のうち、ストーンコールドだけがこの時点では首の故障で長期欠場中。ロックが“ロウ”の画面に登場するときに映し出されるテロップはシンプルにThe Rockに統一された。
ロックのニックネームが“ピープルズ・チャンピオンPeople’s Champion”“ザ・グレート・ワンThe Great One”ならば、トリプルHのそれは“ザ・ゲームThe Game”。
ロックのエスニシティー(民族的バックグラウンド)がアフリカンとサモアンの混血=ジ・アメリカンならば、トリプルHのキャラクター設定は英国貴族の血をひくニューハンプシャー育ちのホワイト・ボーイ=ヨーロッパ・ルーツということになる。
ストーンコールドとロックの宿命のライバルで、オーナーの娘ステファニーの“夫”というレスラーとしても連続ドラマの登場人物としてもいちばん“どセンター”のポジションをつねに演じているのはトリプルHだった。
企業としてのWWEは自社のプロダクトをスポーツ・エンターテインメントと呼称しているが、試合(プロレス)そのものはいたって伝統的でオーソドックスなスタイルで、連続ドラマのいちばん大切なところのストーリーラインはチャンピオンベルトをめぐる王道の物語になっていた。
ロックはすさまじいスピードでアメリカでいちばん売れっ子のスポーツ・セレブリティーに変身してしまった。トリプルHはライブ・オーディエンスのまえで時間をかけて闘うタイトルマッチを積み重ね、負けそうで負けないオールドファッションな悪党チャンピオンの道を歩みはじめていた。
ステファニーはオーナーのひとり娘として、トリプルHの妻として、怖いもの知らずでわがままお嬢さまキャラクターを演じた。“じゃじゃ馬”が毎週、アメリカじゅうのテレビ視聴者とシェアしていたのは、ひとりの女性がゆっくりと成熟していく姿だった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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