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商社、広告代理店、旅行業界。企業再生のプロが教える就職企業選びの正解



2:電通VS博報堂 博報堂のほうが身の丈にあった経営で安全


 電通と博報堂といえば、「電通は武士、博報堂は公家」としばしばたとえられる。また、前者が体育会系、後者が知的でスマートな印象を持たれている。事実、マスコミ業界でも、電通マンと言えば、クライアント至上主義で取引先には徹底的な気遣いをし、「ムリ」と言わない社風という印象が持たれている。

 なんとしても目標を達成のために邁進し、それゆえにクライアントからも絶大な信頼を集める電通。ただ、そうした社風からか、昨年物議を醸した入社1年目女子社員の過労自殺が起きていることも事実だ。

 こうした報道は同社の「体育会系」の印象をより強くしているかもしれない。

 対して、博報堂はスマートにムリなものはムリと言う社風(と言われる)。電通に比べて相対的に体育会っぽさは薄いという声もある。だが、これらはあくまで両社に持たれているイメージにすぎない。

 ここに財務諸表の比較を加えると、両社の特徴はまったく違った色彩となる。

 まずは、借入金に頼っていない割合を示す自己資本比率をみていきたい。電通と博報堂では、電通が31.1%で博報堂が43.3%。

 圧倒的に博報堂が借入金に依存せずに経営をおこなっていることがわかる。また、短期的な資金の支払割合(いきなり資金が尽きない割合)を示す流動資産比率では、電通が101.2%で、博報堂が141.2%となっており、これまた博報堂のほうが高い数値となっている。

 流動比率において、企業経営の安全ラインが120%といわれていることから、博報堂は大きくその基準も超えており、安全性が高いといえるだろう。

 ただし、企業の累積された資産の合計である純資産額では、電通は、博報堂の4.7倍の蓄積があり、業界のガリバーであることに間違いはない。また、労働問題で大きな社会問題となった電通の平均給与は1247万円だが、博報堂は1035万円と、電通に軍配があがる。

 繰り返すが、重要なのは両社のOB訪問をして、社員の印象だけでどちらがよいと結論づけるのではなく、様々なデータを読み解いて自分に合った企業を選ぶことだ。

3:旅行会社 JTBは自己資本も流動比率も高いので安全


 旅行会社の一強であるJTBは就職ランキングも全業種でトップ10入り。そんな JTBの自己資本比率は25.2%。二期連続赤字となってしまい業界で負け組になりそうな近畿日本ツーリストの19.1%とは大きな差が生まれている。

 ”野武士”とよばれ業界でも歴史のながい近畿日本ツーリストとしては、ここからの巻き返しを期待したい。そして、それぞれの流動比率は、JTBが114.4%で、近畿日本が111.1%であるから、そこまで大きな差はない。

 平均年収は、JTBが人件費も平均給与も有価証券報告書に開示していないため正確な数値はわからない。近畿日本の平均給与は574万円。自己資本比率以外に大きな差がないので、あとは社風で選ぶのがよいのかもしれない。

3つの業界から見えてくるポイント


 上記は、あくまでもっとも簡単に各企業の財務諸表を比較したにすぎないが、重要な視点を改めて整理しておこう。

 借入金の依存度をあらわす自己資本比率をひとつ取っても、博報堂は43.3%と借入金への依存率は低く、近畿日本ツーリストは19.1%と8割以上を借入金に頼っており、財務体質に大きな違いが生まれている。

 また、業界が違うので利益率のみでの単純比較はできないが、近畿日本ツーリストの赤字前の平成27年の決算では、経常利益率が1.57%であり、三井物産の7.88%(三菱商事の前期決算は創業以来初の赤字だったので三井物産で比較)や博報堂の2.24%とは目劣りする。

 1人当たり経常利益額でも、近畿日本は95万円、博報堂で206万円、三井物産が5714万円となっており、商社の給与が高い理由が垣間見える。

てるみくらぶも陥った旅行会社の罠


 このような数字をみていくと、てるみくらぶが自転車操業のような経営状況だった理由もわかってくる。そもそも旅行会社は利益率があまり高くないのだ。

 注意してほしいのは、平均給与は、あくまで”平均”。その組織に属する社員の年齢にも影響される。比較的若い組織である旅行会社は若年層が多いことから、ならせば給与は安くなる傾向にある。

 一方で、生涯勤めるに近い総合商社は、高齢の社員も多く、平均給与も高くみえるので、数字の中身も吟味する意識も必要だ。

 就活中の学生は、有価証券報告書や帝国データバンクなどから、さまざまな数値を入手することで簡単に輪郭がわかるし、たとえば、異常に借入金が大きい会社であれば、就職活動先としては優先順位を後回しするという意思決定をしたほうがよい。

 企業のイメージだけで選択するのではなく、財務諸表を読み解いて客観的に就職先は選ぶ。現在、企業の再生を手がける身としては、老婆心ながらそう思うのだ。

【三戸政和】
日本創生投資代表取締役CEO。日本最大級のベンチャーキャピタル、ソフトバンク・インベストメントにて、国内外の投資先に経営参画しながら、成長戦略、株式公開支援、M&A戦略、企業再生戦略などを行う。その後、兵庫県議会議員を経て現職。同志社大学卒業。

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