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てるみくらぶ破産にみる、会社の「良い借金」「悪い借金」とは?

 3月27日に格安を売りにしていた旅行会社「てるみくらぶ」が東京地裁に破産を申請し、破産手続きの開始決定がなされた。同社で予約した旅行者は、現地でホテルがキャンセルとなったり、帰国できない可能性があったりと、春休みという旅行シーズンに日本中に大迷惑をかける破産劇となっている。 借金 ニュース報道によると、同社は前期過去最高の195億円を売り上げていたものの、2015年春ごろから経営状態が悪化。資金繰りが厳しくなり、151億円の負債を抱え破産申請に至ったという。破産の決定的要因は、航空券の発券に必要な国際航空運送協会への支払い4億円が用意できなかったことだ。この4億円の支払いができていれば「てるみくらぶ」は破産せずにすみ、春休みの旅行者に大迷惑をかけなくても済んだ可能性がある。

てるみくらぶは「良い借金」ができなかった

三戸政和

三戸政和氏

「ここで”良い借金”を起こせていたら、事業が継続した可能性もあった」と解説するのは、企業の再生を手がけるファンド会社日本創生投資で代表取締役社長を勤める三戸政和氏だ。 「てるみくらぶは、『現金一括払いで予約すると割引』という消費者から前借りするようなことも行なっており、相当資金繰りが厳しかったと考えられます。とは言え、ビジネスモデル的にも限界がきていたので、”良い借金”は作れなかったとは思いますが……」  10年ほど前の2008年には、不動産会社アーバンコーポレーションが616億円もの経常利益を上げていたのにも関わらず、不動産不況や全国銀行協会による暴力団排除条項などによる銀行からの借入が上手くできなくなり民事再生に至り、日本最大の黒字倒産と言われた。つまりは、会社というのは、売上や利益水準が良くても資金繰りが詰まれば倒産し、逆に赤字が続いていても、資金繰りが続けば倒産はしない。重要なのは、資金をつなぐための借入金。この借入金に「良い借金悪い借金がある」というのが三戸氏の考えだ。  以下、三戸氏に投資の際に見るべきポイントを踏まえながら「良い借金」と「悪い借金」のについて語ってもらった。

借金(資金調達)には2種類ある

 てるみくらぶ倒産のニュースは、新卒採用の取り消しなど、今でも波紋を広げていますが、様々な意味で「企業の借金」を考える良い機会だったと思います。そもそも借金が良いか悪いかについては、「どちらとも言えない」というのが私の答えです。その理由を、「企業の借金」の専門家として解説できればと思います。  まず、借金には融資と出資の二種類があります。  融資とは、会社とは関係のない他人からの資金提供(他人資本)であり、返さなくてはいけないものです。いわゆる銀行からの借入がこれにあたります。これは、過去の業績などが重視され、担保や個人保証が要求されやすく、利息を取られる性質のものです。  いっぽう、出資は、会社と関係のある自己資金(自己資本)であり、基本的に、返さなくて良いもの。ですが将来の事業計画などが重視され、経営権(株式)を渡さなくてはいけなく、配当を要求される性質のものです。  導入部分で触れた資金繰りの問題では、前者の融資は、返済ができなくなれば会社は倒産してしまいますが、後者の出資は返済の概念がないので、倒産のリスクは非常に低くなります。  この資金調達の割合で1つ、良い借金と悪い借金を見分けることができます。当然、「出資」である自己資本が多いほうが倒産の確率が低く、良い借金をしているということになります。その見分け方ですが、業種業態などにも左右されますが、50%以上かどうかが健全な資金調達を行っている基準と言えます。 ▶︎良い借金「自己資本50%以上」 ▶︎悪い借金「自己資本50%以下」
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トヨタの自己資本比率が少ない理由
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