「ZERO1って、ゴキブリみてえだな」それでも大谷晋二郎がZERO1を続ける理由
――新日本プロレスを辞めて、ZERO1に入団したのはなぜですか。
大谷:橋本真也さんに誘っていただいたんですけど。橋本さん、そのとき一人だったんですよ。新日本を解雇されて。すごいカッコつけた言い方だけど、「橋本さんを守れるのは僕しかいない」と思ったんですよね。橋本さんはプライドが高い人だから、入って1、2か月は、僕が当時、新日本プロレスからいただいてたギャラそのままの額をくださったんです。でも、数か月でみるみる落ちていって、とてつもないところまで行きました。だけど、強がってると思われるかもしれないけど、ホントに後悔はないんですよね。
――2004年に、橋本真也さんがZERO1を離れたとき、どう思いましたか。
大谷:いろんな人から言われましたよ、「もうやめればいいのに」って。でも、橋本真也を慕ってきた選手がいっぱいいたので、やめたらみんな路頭に迷っちゃいますから。橋本さんは2005年にお亡くなりになったんですけど、まあ、叩かれましたよ。ありもしない話がどんどん出てきて。我々が橋本さんを追い込んだ、殺した、みたいに言う人もいたし。僕たちが追い出したと思ってる人たちがいっぱいいるんです。そんなわけないじゃないですか。僕たちは橋本さんとやりたいから、ZERO1に行ったんですよ。
――2011年には、橋本真也さんのご子息である大地選手がZERO1からデビューしました。
大谷:大地が「ZERO1でデビューしたい」と言ってきたとき、本当に続けてきて良かったと思いました。今だから言いますけど、いずれZERO1は大地が継がなきゃいけないと思いましたね。僕は、橋本真也から橋本大地への橋渡し役でいい。こいつを一人前にするのが僕の使命だと。残念なことにそれから3年で大地はZERO1を離れてしまったんですけど、今、大日本で一生懸命頑張ってるって聞くので、良かったなと思います。
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――旗揚げから17年。やめようと思ったことは?
大谷:某レスラーに、「ZERO1って、ゴキブリみてえだな」って言われたことがあるんです。絶対、潰れないという意味だと思うんですけど。この野郎、と思いました。ゴキブリで結構。でも続けてやる、と。続けて良かったと思ってますよ。後悔はしていない。だって新日本にいたら、こんな経験、絶対出来なかったですから。新日本のとき、自分でチケットを売ったことがなかったんです。友だちから頼まれても、「プレイガイドに行けよ」と思ってる自分がいたんですよ。けどZERO1に入ってから、チケットを1枚買ってくれたら、その人を抱きしめたいくらい嬉しい。本当はプロフェッショナルなレスラーって、新日本が正解だと思うんです。練習や試合に集中して、リングで素晴らしい試合を見せる。新日本がやってることが絶対正解ですよ。でもチケットを買っていただく嬉しさを知ったのは、自分にとっては大きなプラスでした。
――以前、田中将斗選手にインタビューさせていただいたとき(大仁田厚に憧れて――WWEも評価する“弾丸戦士”田中将斗がZERO1に止まる理由【最強レスラー数珠つなぎvol.8】)、「同年代の大谷が社長をやっているからZERO1にいる」とおっしゃっていました。田中選手に対して、どんな思いがありますか。
大谷:田中は今、ブードゥー・マーダーズっていう敵方にいるので、誤解されたくはないんですけど……。かけがえのない男ですよね。僕にだって分かりますよ、田中将斗というプロレスラーの商品価値くらい。あいつがフリーだったら、ZERO1にいるより絶対、稼げるはずなんです。ヘタしたら何倍も。なのに、“ZERO1の田中将斗”でいてくれる。いつかはいい思いをさせなきゃと思います。リングでは全力であいつと戦うけど、そのリングで戦っていることを、いつか幸せに思えるようにしてやんなきゃなと。
――これからZERO1をどうしていきたいですか。
大谷:当然、後楽園を埋めるという目標をまず達成しないといけない。そうするためには、こういう言葉で逃げちゃいけないですけど、ただひたすら、大谷晋二郎をするしかないんですよね。クサいことを言って、でもずっと結果が出ていない大谷晋二郎に、ついてきてる奴らがいるんですよ。そいつらに、絶対いい思いをさせてやりたい。金銭面でもそうだし、いつも満員のお客さんの前で試合が出来るようにしてやりたい。僕はひたすら、大谷晋二郎の答えを出さなきゃいけないんですよね。
――ありがとうございました。
前回の記事に、「今一番見るべきプロレス団体はZERO1」と書いた。しかし、「今」ではなく、「これからずっと」見るべき団体であると、今回のインタビューを通して思った。大谷の思い、大谷を慕うレスラーたちの思い、スタッフの思い、ファンの思い。いくつもの思いが重なり合って、今のZERO1がある。そうでなければ、17年間も残っているはずがないのだ。
ZERO1は後楽園ホールを満員にすることが出来るのか? 三又又三はファンからの信頼を得ることが出来るのか? “ゴキブリ”みたいなZERO1が、オオクワガタに化ける日は来るのか?
これからもZERO1の動向を追っていきたい。
<取材・文/尾崎ムギ子 撮影/今井裕治>
尾崎ムギ子/ライター、編集者。リクルート、編集プロダクションを経て、フリー。2015年1月、“飯伏幸太vsヨシヒコ戦”の動画をきっかけにプロレスにのめり込む。初代タイガーマスクこと佐山サトルを応援する「佐山女子会(@sayama_joshi)」発起人。Twitter:@ozaki_mugiko
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■プロレスリングZERO1 ドリームシリーズ 真夏の後楽園決戦!
https://www.z-1.co.jp/event/detail_20170831.html#id184
【開催日】8月31日(木)
【開場時間】17時45分
【開始時間】18時30分
【会場】後楽園ホール
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