更新日:2022年10月05日 23:26
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サブゥーとシーク様の“親子の断絶”みたいなやりきれなさ――フミ斎藤のプロレス読本#081【サブゥー編エピソード1】

サブゥーとシーク様の“親子の断絶”みたいなやりきれなさ――フミ斎藤のプロレス読本#081【サブゥー編エピソード1】

これが“アラビアの怪人”ザ・シークの全盛期のパブリシティー・フォト。デビュー当時のリングネームはシーク・オブ・アラビアだった。サブゥーは若いころのシークにそっくりなのだ。

 伯父上の反応はどこか冷淡だった。ほんとうはそうではなかったのかもしれないけれど、少なくともサブゥー自身はそう感じた。近い将来のこと。遠い将来のこと。これからの自分について考えたさまざまなこと。あれやこれやを報告しようとしているのに、シーク様はサブゥーのはなしにまるっきり興味を示さなかった。 「お前はまだベイビーなんだ。お前のことは、このわしにまかせておけばいい」  大きな声を出すつもりはなかったけれど、サブゥーの声のトーンはそうとう高かったらしい。シーク様は他人から怒鳴られたことなんてないから、キョトンとしたまま甥っ子の主張に耳を傾けることになった。  サブゥーは、伯父上に自分のことをもっとよく知ってもらいたかった。それだけははっきりさせておきたかった。  おそらく、シーク様は甥っ子がレスラーとしても人間としても変わりつつある事実を認めようとしなかったこと、それによってサブゥーを傷つけていたことにまったく気づいていなかったのだろう。  シーク様とサブゥーはちゃんとしたオトナの話し合いをしていた。そして、その会話はいつのまにか初めての口ゲンカになっていた。偉大なる伯父上も、もうサブゥーを子ども扱いすることはできなくなった。
斎藤文彦

斎藤文彦

 シーク様の知らないうちに、甥っ子サブゥーは一人前のプロフェッショナルに成長していた。思いのたけをぶつけ合ったことで、ふたりはおたがいに対して、いままで感じることのなかった親しみを感じるようになった。(つづく) ※文中敬称略 ※この連載は月~金で毎日更新されます 文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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⇒連載第1話はコチラ

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