愛しい人たちがそこにいる、っていう感じ――フミ斎藤のプロレス読本#088【サブゥー編エピソード8】
サブゥーと出逢ったのは、たしか雨の日だった。新宿で友だちと待ち合わせをして、食事をして、喫茶店でお茶を飲んで、終電に乗り遅れてタクシーで家に帰ったあの晩からミブゥーの冒険ははじまった。
レストランでたまたま目のまえに座っていた目のきれいな青年は、もう次の日からヒトミに電話かけてくるサムバディになっていた。女の子とおしゃべりをするのがあまり得意ではないサブゥーは、たちまち夢中になってしまったその女性の名を忘れないように「ヒトミ、ヒトミ……」と何度も口のなかでつぶやいた。
サブゥーは、はじめからミブゥーをランシングに連れて帰るつもりだった。家には体の弱い母イヴァさんがいる。働いて家の家計を支えること。偉大なる伯父ザ・シークのようになること。レスリング。トレーニング。ステイ・ウィズ・マイ・マザー。これがサブゥーのプライオリティーである。
これから大切な人になるサムバディにめぐり逢っちゃったからには、みんなが仲よくやっていける方法をか考えなければならない。
ランシングの古い家は、サブゥーとサブゥーの母親がふたりで暮らす場所からサブゥー、ミブゥー、イヴァさんの3人がずっといっしょに生活していくための空間に模様替えされた。
サブゥーがツアーに出ているあいだは、ミブゥーとイヴァさんはお留守番。サブゥーとミブゥーがふたりで日本へ行ってしまうときは、イヴァさんが困らないように家のなかの用事をちゃんとかたづけておかなければならない。
ミブゥーは、まだミブゥーとヒトミのあいだを行ったり来たりしていた。(つづく)
※文中敬称略
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ1
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