ぶっ壊れたリングとカモナ・ワナレイヤ――フミ斎藤のプロレス読本#114【ECW編エピソード06】
仮設ステージは、ヘヴィーなオーディオ&ミキシング器材が並んでいる“カッコーの巣”のすぐよこにつくられた。ピンスポットの照明がステージのまんなかを照らし、音楽が鳴りはじめると、上半身に白いバスタオルを巻いたカモナが舞台の上手(かみて)に現れた。
あとはいつものように踊るだけである。ポール・Eは「1曲だけでいいから」なんていってたけれど、壊れたリングはそうかんたんには直りっこない。“リング屋”マイキーは、リング下で汗だくになりながら突貫工事をつづけていた。
けっきょく、カモナがゆらりゆらりと踊ってくれているあいだに、リングのほうはなんとか使える状態にはなった。ついさっきまでブーブー文句をたれていた観客はもうすっかり機嫌をなおしてワーワーいいはじめた。
最後の1曲を踊り終えると、カモナはまた上半身にきっちりとタオルを巻いてステージをあとにした。ドレッシングルームでは、チームプレーヤーの帰還をみんなが大きな拍手で出迎えた。
サブゥーがドレッシングルームを飛び出していった。遠くのほうでまた“オーッ”という大きなどよめきが起きた。メインイベントがはじまった。
カモナは、歓声に背を向けるようにして、またバックステージの奥のほうへ消えていった。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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