大仁田厚“まぼろしのECW全米爆破計画”――フミ斎藤のプロレス読本#119【ECW編エピソード11】
全試合終了後、ECWアリーナ内のプレスルームでは同社プロデュースのTVショー、(日米の)プロレス・マスコミ、インターネット系メディア向けの緊急記者会見がおこなわれた。
記者会見の席上、大仁田はできるだけわかりやすい単語をはっきりと発音しながらの英語のスピーチで“電流爆破デスマッチ”の対戦相手を募集。サンドマンがこれに名乗りをあげた。
“全米爆破計画”のプランが立ち上がった時点で、サンドマンは「なにがあってもその試合だけはオレにやらせてくれ」とポール・Eに直談判していた。
大仁田とサンドマンはきわめて紳士的に握手を交わし、両者の初対決が基本ラインで合意に達した。ECWはこの日の大仁田の“乱入シーン”と記者会見の模様をビデオに収録し、翌週土曜オンエア分のテレビ番組にインサートした。
大仁田はECWサイドに対し“全米爆破計画”の実現を働きかけ、ECWもアメリカ国内での“電流爆破”の実用化に向けて具体的な事業プランに着手するはずだった。
アメリカは映像による“暴力”にとことん厳しい国である。テレビでも映画でもビデオでもそのコンテンツが“G”“PG”“R”といったぐあいに段階的に分類されている。大仁田の試合映像は“電流爆破”だけでなく“流血”のシーンでも文字どおり“爆弾”を内包していた。
また、ライヴの興行では爆発物や化学薬品(火薬)の使用に関するライセンス取得とその使用許可、火災保険や器物破損・損壊に関する免責書類の作製と裁判所への申請・認可などいくつもの大きな法的ハードルが待ち構えていた。
“全米爆破計画”つまり“電流爆破デスマッチ”のアメリカ市場での実用化は、大仁田が予想していたよりもはるかにむずかしいプロジェクトだった。
時間ばかりが経過し、ポール・Eも大仁田もおたがいに――悪いと思いながらも――これという結論が出せないまま“全米爆破計画”はまぼろしのプロジェクトに終わった。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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