大仁田厚“まぼろしのECW全米爆破計画”――フミ斎藤のプロレス読本#119【ECW編エピソード11】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
そのプロジェクトは“全米爆破計画”と呼ばれていた。大仁田厚が“電流爆破デスマッチ”の全米進出に向けて本格的に動きだした。アメリカ側の受け皿はフィラデルフィアに本拠地を置くハードコア団体ECW(エクストリーム・チャンピオンシップ・レスリング)。
大仁田の計画とは、ごくシンプルにアメリカ人をあっと驚かせるために“電流爆破デスマッチ”をアメリカに輸出しようというものだった。
大仁田サイドとECWのあいだでこのプランに関する最初の会談がおこなわれたのは1997年12月。ECWの主力メンバーがFMWのシリーズ興行に来日したさい、大仁田とポール・ヘイメンが話し合いの場をもった。
大仁田は翌1998年6月、ECWアリーナ定期戦にゲスト出場、サンドマン&トミー・ドリーマー対ダッドリー・ボーイズ(ババ・レイ&ディーボン&ビッグ・ディック)の2対3ハンディキャップ・タッグマッチに“乱入”した。
サンドマンとドリーマーに招き入れられるようにして入場ゲートに姿を現した大仁田は、羽織、袴、ゲタばきという純ジャパニーズのコスチュームを身にまとっていた。
アリーナ内PAシステムからはおなじみのテーマ曲“ワイルド・シング”――それもFMW版リミックス音源――が流れた。ECWアリーナの常連層は、それが大仁田の“音”だということをちゃんと知っていた。
大仁田は、サンドマンから手渡された有刺鉄線2X4の角材でババ・レイのボディーを一撃。さらにドリーマーが背後からハーフネルソンでホールドしたディーボンにも有刺鉄線角材をフルスウィング。
さらに返す刀でなんとサンドマンのボディーにも気合の入った有刺鉄線角材2×4をひと振りし、ドリーマーにもボディーへのキックからDDTをお見舞いした。
ECWアリーナ内の空気が凍りつくと、大仁田はキャンバスにダウンしたサンドマンの顔に缶ビールの“聖水シャワー”をぶっかけた。これが約4分間の“乱入”のラストシーンとなった。
ハードコア・スタイルの“教祖”の突然の出現にECWアリーナはどよめき、大仁田は“電流爆破デスマッチ”の“COMING SOON”を強烈に印象づけた。
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