サブゥーの“魔法のじゅうたん”はいまどこ?――フミ斎藤のプロレス読本#117【ECW編エピソード09】
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199X年
サブゥーは“魔法のじゅうたん”に乗ってニューヨークのロッチェスターという町を走っていた。“じゅうたん”の名はクルーズマスターで、どこへ出かけるときでもだいたいこれに乗っていく。
アパートメントの間取りでいえば、コンパクトな1LDKくらいのサイズということになるのだろう。運転席に座っているのは、いつもサブゥーである。
ミシガン州ランシングからニューヨーク・エリアまではかなりいいペースで走っても10時間くらいのドライブになる。飛行機を使ったほうがずっとラクなのはわかっているけれど、プロレスラーは自動車でアメリカじゅうを移動するものなんだそうだ。
これは偉大なる伯父“アラビアの怪人”ザ・シークの教えだから、ちゃんと守らなければならない。ロードに出る、ツアーに出る、ということは“魔法のじゅうたん”に乗ってフリーウェイをひた走るという物理的な作業を指している。
シークじいさんは古い人間だから「プロレスラーはキャデラックかリンカーン・コンチネンタルに乗りなさい」というけれど、スクウェアな車体は長旅には適さない。どれだけ長距離を走っても、やっぱり1日の終わりにはねぐらを探さなければならない。
サブゥーが欲しがっていたのは、どこにいてもマイルーム、みたいなプライベート空間だった。
そうしたくなったらいつでもゴロンとよこになれるベッドルームがあって、食事をしたりビデオを観たりするリビング&ダイニングルームがあって、キッチン、シャワー、トイレ、電子レンジ、エトセトラ、エトセトラを完備したモーターホーム。そのつもりだったら、きょうからでもこの移動型ドレッシングルームが“現住所”になる。
木曜の夜にランシングを出ると、金曜の朝にはイーストコーストにたどり着く。同じ距離の移動でガソリン代と航空運賃をくれべてみると、ガソリン代のほうがちょっとだけ安い。
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