“天上人レスラー”になったブル中野――フミ斎藤のプロレス読本#135[ガールズはガールズ編エピソード5]
プル中野は日本の女子プロレスの長い歴史のなかで初めての“ロングラン”になった。全日本女子プロレスの不文律だった“25歳定年制”はどこかへいってしまった。
いまそこにある女子プロレスのなかには争ったり衝突したりしなければならないものはもうなにもないから、あえてどこかに目を向けるとしたら“男子プロレス”しかない。
ブル様のライバルはジャイアント馬場様であり、アントニオ猪木様ということになる。長州力様だっていい。一時代を築いたヒーローたちはみんな射程距離に入っている。
これからのブル様の仕事は、ブル中野のエッセンスをできるだけたくさんの人たちに分け与えていくことなのだろう。
すべての女子プロレスラーという女子プロレスラーはいちどはブル様とリングの上で向かい合ってみるべきだし、ブル様はブル様であくまでもアートとしてのプロレスをつづけていけばいい。
“天上人”となったブル様は、そんなにあせってオイシイところを持っていこうなんて考えない。試合のなかでほんの一瞬だけキラッと光るものを魅せつけて、あとは知らんぷりしておく。ブル様の存在理由は“ギブGive”であって“テイクTake”ではない。
いつだったかブル様は、ブル様が考えるところのいちばん気持ちイイ状態を、イキそうでイキそうでなかなかイカなくて自分がイキそうになりながら相手をイカせること、と説明してくれたことがあった。
ブル様は“天上人”としてみんなが闘っているリングを見守っている。女子プロレスがいまよりもっとハートフルでソウルフルな場所になってくれるように。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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