レジーねえさんはいつもバスの窓から外の景色を眺めている――フミ斎藤のプロレス読本#132[ガールズはガールズ編エピソード2]
―[フミ斎藤のプロレス読本]―
199×年
オフィスからもらった英文の日程表には毎日、ひとつずつバツが増えていく。レジー・ベネットは、1日の仕事を終えるたびに日付のところに“ばってん”をつけている。
もういくつ寝るとお正月ではないけれど、こうやって句読点をつけておくと生活のリズムが決まりのいいものになる。
オフの日だってベッドに入るまえはやっぱりスケジュール表をにらんでおく。こんどの休みはいったいいつなのかを確かめておくためだ。
ロードに出ているとどうしても曜日の感覚がなくなる。でも、サンデーだけはちゃんとおぼえておかなければならない。日曜の夜は、妹のブランディに電話をかける日だ。
ブランディは、フロリダ州セントピータースバーグのエカード大学で海洋学を勉強しているカレッジ・キッド。15歳もトシが離れた姉妹は、海がみえるアパートメントをシェアしている。
レジーはいままでずいぶんいろいろな土地に住んだ。9人兄弟の上から4番めだから、子どものころは家のなかではあまり重要な登場人物ではなかった。
15歳のときにルイジアナ州ニューオーリンズの実家を出て、テキサスのサンアントニオに流れていってカントリー・バンドのバックコーラスとして働いた。
エアロビクスのインストラクターになって、ボディービルに打ち込んでいたころはロサンゼルス郊外のヴェビスビーチにいた。そのころはもう結婚していた。
プロレスと初めて接したのはLA時代で、チャボ・クラシックの弟で、エディの兄のマンドー・ゲレロからレスリングの手ほどきを受けた。
けっきょく、カリフォルニアには10年近くいたけれど、本格的にプロレスをやってみようと思ったのはそのときのハニーと別れてからだった。“ダダーン、ボヨヨーン”のコマーシャルに出演したのはちょうどそのころだ。
ブラッド・レイガンズ先生のところでプロレスの再修行をしているときに新しいボーイフレンドができて、こんどはミネアポリスに引っ越した。LAで使っていた家具を捨てるのがいやだったから、ミネアポリスまで2日半かけて車で移動した。
ミネアポリスのあとは故郷ルイジアナに戻った。レジーが家出したころまだベイビーだった末っ子のブランディはいつのまにかハイティーンになっていた。
ほとんどしゃべったこともなかった妹が、昔の自分と瓜ふたつだったのでよけい驚いた。ふたりは仲よしになった。
ハイスクールを卒業したブランディは、生まれて初めて家を出て、フロリダの大学に進学する準備をすすめていた。
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