――小橋さんが主催しているFortune Dreamはご存じですか？ 棚橋：後楽園でやってる興行ですよね？　SNSや『週刊プロレス』で見ました。 小橋：棚橋君、あんまり俺に興味ないんだね。 棚橋：違います、違います！　僕も呼んでほしかったなと（笑）。 小橋：棚橋君を呼びたくても、スケジュールとかなかなか難しいんだよね。 棚橋：謎のマスクマンになって、突如現われますか！ 小橋：いいねえ！ 棚橋：小さい頃、生き別れになった双子の兄ですって（笑）。 小橋：それいい！　マスクはこっちで用意するから。 棚橋：お願いします（笑）。 小橋：デストロイヤーのマスクね。 棚橋：バレバレじゃないですか（笑）。「オレンジクラッシュ」みたいなリングネームで、オレンジを基調にしたマスクマンがいいです。 小橋：じゃあ、採寸を（笑）。……こういうことがね、棚橋君は言えるんだよ。頭がいいし、サービス精神が旺盛。俺は棚橋君に頑張ってほしいんだよね。いま40歳だっけ？ 棚橋：41になりました。 小橋：さっき「41歳ってどうですかねえ？」って言われたけどさ。 棚橋：怒られちゃいました。「甘えんな！　まだまだイケる」って。 小橋：この間の試合を見たら、なにを言ってるんだと。実質トップを走ってるよ。正真正銘のエース。初めて話をしたときから、本当にポンポンポンと上がっていったよね。2003年に試合をしたときは、まだまだ。 棚橋：若手でちょっと期待されているくらいだったと思います。 小橋：技とか気持ちもそうだけど、受け身が上手かったよ。いまも試合を見てて思うんだけど、全日本の選手の感じもすごくする。 棚橋：ファンの間では、「受け身が上手いのは全日本プロレス」っていうのがありますよね。なぜならば馬場さんが受け身の練習をすごくやらせるから、みたいな話があって。小橋さんに受け身が上手いって言われるのは、最高に嬉しいです。 小橋：ホントに上手かったし、それ以上に気持ちがきた。 棚橋：いやもう、向かっていくしかなかったので。技術もなにもなかったですから。小橋さんと本田（多聞）選手対、僕と永田（裕志）選手だったんですよね。現役のときに小橋さんと試合できたのは、その1回だけ。ライバル団体だったので顔では睨んでましたけど、心の中では「小橋建太のチョップ食らったー！　ちょーイテー！　けどうれしー！」みたいな感じでした（笑）。 小橋：そのときは、棚橋君にそんな思いがあったなんて知らないからね。知ってたらそれ以上にやったかもしれない（笑）。リスペクトがあって目の前に立ってくれていたんだと思うと、試合をやってよかったなと思うよ。あのときの俺と、いまの棚橋君が試合をしたらどうなってたかな？ 棚橋：楽しいですよね、そうやって想像すると。 小橋：馬場さん、猪木さん、力道山先生とかね。俺と試合をしたらどうだったんだろうとか、試合をしてみたいなとか。想像するのが楽しい。 棚橋：膝をケガされる前の小橋さんは、動きがめちゃくちゃ機敏だったんですよ。でも膝を痛められてから、少しずつファイトスタイルも変えていって。そういうところがまた、「頑張れ！」と思わざるを得ない。僕も年齢を重ねて膝を悪くしたり、あちこち故障を抱えてるんですけど、小橋さんや諸先輩レスラーが体を捧げてこのジャンルを守ってきてくれたので、覚悟はあります。 【PROFILE】 ●棚橋弘至（たなはし・ひろし） 新日本プロレス所属。’76年11月13日、岐阜県大垣市生まれ。’99年4月、新日本プロレス入門。同年10月、真壁伸也（現・真壁刀義）戦でデビュー。IWGPヘビー級をはじめ、IWGPインターコンチネンタルなど多くのベルトを巻く。’16年、ベスト・ファーザー イエローリボン賞（スポーツ部門）、ベスト・ネクタイスト賞を受賞。’18年、映画『パパはわるものチャンピオン』公開予定。著書に『全力で生きる技術』『史上最強のメンタルタフネス』などがある。Twitter：@tanahashi1_100 ●小橋建太（こばし・けんた） （株）Fortune KK代表取締役。’67年3月27日、京都府福知山市生まれ。’87年6月、全日本プロレスに入団。“プロレス四天王”と呼ばれるレスラーの一人。2000年6月、プロレスリング・ノアに移籍。’03年3月、GHCヘビー級王座獲得。13度の防衛に成功し、“絶対王者”と呼ばれる。’06年6月、腎臓がんが発覚するが、2007年12月、奇跡のプロレス復帰を果たす。’13年5月11日、引退。現在はチャリティーや講演会など、幅広い活動を続けている。Twitter：＠FortuneKK0327 構成／尾崎ムギ子　撮影／橋本一美