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韓国の保守派がうらやむ「国民の幸福を祈る皇室の伝統」――評論家・江崎道朗

国民の幸福を祈る皇室の伝統

 天皇陛下の「譲位」の日程を2019年4月30日と定める政令が12月8日の閣議で決定され、12月13日の官報に掲載され公布された。この政令によって陛下が再来年4月30日に「譲位」され、皇太子殿下が翌5月1日に即位される日程が確定した。  これから2年間、皇室のことがいろいろと話題になると思われるが、そもそも皇室、天皇とはどういうご存在なのだろうか。  歴史や公民の教科書では、天皇は戦前「元首」であったが、戦後は「国民統合の象徴」にその役割は大きく変わったとされている。確かに憲法上の表現は大きく変わったが、その本質は変わっていない。それは「国民の幸福を祈る精神的伝統」だ。  昭和56年、「戦後生れの世代が国民の過半数を占める時代になりましたが、今後皇室の在り方は変わってゆくとお考えですか」という記者からの質問に、皇后陛下は次のようにお答えになった。 《時代の流れとともに、形の上ではいろいろな変化があるでしょうが、私は本質的には変わらないと思います。歴代の天皇方が、まずご自身のお心の清明ということを目指されて、また自然の大きな力や祖先のご加護を頼まれて、国民の幸福を願っていらしたと思います。その伝統を踏まえる限り、どんな時代でも皇室の姿というものに変わりはないと思います。》  天皇陛下も現行憲法との関係から、こう述べていらっしゃる。 《日本国憲法で、天皇は日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であると規定されています。この規定と、国民の幸せを常に願っていた天皇の歴史に思いを致し、国と国民のために尽くすことが天皇の務めであると思っています。天皇の活動の在り方は、時代とともに急激に変わるものではありませんが、時代とともに変わっていく部分もあることは事実です。私は、昭和天皇のお気持ちを引き継ぎ、国と社会の要請、国民の期待にこたえ、国民と心を共にするよう努めつつ、天皇の務めを果たしていきたいと考えています。》(平成10年、お誕生日前の記者会見)  現行憲法に規定された「象徴」たる天皇の務めとは「国民の幸せを常に願っていた天皇の歴史に思いを致し、国と国民のために尽くすこと」だとおっしゃられているのだ。こうした憲法解釈こそ、国民に広く周知すべきだろう。  こうした天皇、皇室の存在がいかにありがたいことなのか。西岡会長は、韓国との対比でこう指摘している。 《韓国の保守派元老が最近、私に「韓国の保守派には守るべき伝統や文化がない。我々にとって朝鮮王朝は守るべき伝統ではない。そこが、天皇を持つ日本との違いだ」と語った。韓国保守派は「反共」「反日」など何かに反対することはできても、守るべき民族独自の価値を探しあぐねているという率直な告白だった。(中略)万世一系で常に民のために祈る皇室の存在の大きさを、韓国の政治混乱を見ながらあらためて実感する。》  常に国民の幸せを祈る皇室が拉致被害者について言及され、そのお言葉が拉致被害者たちの心を動かし、一部とはいえ拉致被害者の帰国を実現させることになった。  皇室は政治的権力を振るわれるわけではないが、その「祈り」はわれわれの知らないところで現実の政治に影響を与え、日本を守る力になっているのだ。 【江崎道朗】 1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など
(えざき・みちお)1962年、東京都生まれ。九州大学文学部哲学科卒業後、石原慎太郎衆議院議員の政策担当秘書など、複数の国会議員政策スタッフを務め、安全保障やインテリジェンス、近現代史研究に従事。主な著書に『知りたくないではすまされない』(KADOKAWA)、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』『日本占領と「敗戦革命」の危機』『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』『緒方竹虎と日本のインテリジェンス』(いずれもPHP新書)、『日本外務省はソ連の対米工作を知っていた』『インテリジェンスで読み解く 米中と経済安保』(いずれも扶桑社)ほか多数。公式サイト、ツイッター@ezakimichio

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 ’17年、トランプ米大統領は中国を競争相手とみなす「国家安全保障戦略」を策定し、中国に貿易戦争を仕掛けた。日本は「米中対立」の狭間にありながら、明確な戦略を持ち合わせていない。そもそも中国を「脅威」だと明言すらしていないのだ。

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