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2018年「核戦争の危機」を歴史学者・磯田道史が警告



ものごとにとらわれず自由に情報を見る力を


金正恩

北朝鮮の国営「朝鮮中央通信」(KCNA)は、2017年9月に「新大陸間弾道ミサイルに搭載可能な水素爆弾を開発した」と発表。北朝鮮は、金正恩体制になってからミサイル発射実験・核実験を繰り返し、アメリカや日本・韓国との緊張が高まっている。写真は、核兵器研究所を視察する金正恩・朝鮮労働党委員長

――現在、日本政府はアメリカの対北朝鮮強硬路線を支持し、軍事オプション行使の可能性も囁かれています。

磯田:「核戦争など起きない」と思っている人が多いですが、真珠湾攻撃を始めたとき、日本中が焼け野原になって原爆が2発落とされるなんて、ほとんどの人が思っていませんでしたよね。しかしそれを予測していた人が、少数ながらいたのです。僕は、その人たちのことを調べてみたんです。

――例えば、どんな人がいたのでしょうか。

磯田:その一人は、狩野亨吉(かのうこうきち)という人です。京都大学の文科をつくりあげた人なんですけど、夏目漱石の葬式で弔辞を述べた、当時の誰もが認める賢人、“日本一の碩学”とされた人です。変わった人で、日本中の古文書を買い集めて家の中に積んで、春画などのエロい書物をひとりで研究していた。この人が、天皇の教育係になってくれと頼まれたんです。ところが、その依頼を断ってしまいました。

――どうしてですか?

磯田:狩野亨吉は、「人間の行動がいいとか悪いとか、いちいち考えないといけないのは、自分が属しているグループのせい。そのグループから抜け出せれば自由になれる」という考えの持ち主だったんです。この論法でいけば、「死」すなわちこの世から抜け出れば、自然法則すらその人には関係なく発想ができるということですね。そのぐらい自由な発想の人だったんです。そういうことを、将来天皇として生きる人に教えるわけにはいかなかったんですよ。

 狩野亨吉は、エロ和本が積まれている部屋から空を見上げてこう言っていたそうです。

「そのうち日本は戦争を始める。そのとき、この空いっぱいにアメリカの軍機が覆って、東京は焼け野原にされるだろう」

 そして、1942年に寿命で亡くなりました。

――どうして狩野亨吉はそんな予測ができたのでしょうか。

いそだみちふみ磯田:たくさん情報を集めて、いろんなものにとらわれずものごとを見ている人間には、何が起きるか予測できるんですね。今の日本人も、昔より情報は多いように見えるけれども、真珠湾攻撃前と同じ。ものごとにとらわれず自由に情報を見ることのできる人が少ない。

 いま世界の指導者になっているような政治家たちは、必ずしも“賢者”ではないんです。戦争しないほうが得だということがわからない人もいるし、それぞれ「グループの論理」で動いていて、そのグループが崩壊するまで気づきませんから。僕は、2018年の世界というのはまったく楽観していません。

【磯田道史】
1970年、岡山県生まれ。国際日本文化研究センター准教授。歴史番組やニュース番組などに多数出演、2018年のNHK大河ドラマ『西郷どん』では時代考証を担当。『武士の家計簿』(新潮新書)、『日本史の内幕』(中公新書)、『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』(NHK出版新書)など、著書も多数

取材・文/北村土龍 撮影/森下光紹 写真/時事通信社
※『週刊SPA!』1/9発売号「歴史学者・磯田道史が警鐘を鳴らす 2018年『この国のかたち』」より

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週刊SPA!1/16・23合併号(1/9発売)

表紙の人/ HKT48宮脇咲良 森保まどか

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