“説得力”を身につける方法――佐藤優がしている中学レベルの勉強
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆佐藤さんのような説得力を身につけたい
キング(ペンネーム) 会社員 男性 48歳
どうしたら佐藤さんのような説得力が身につきますか。相対的な相談内容に対してさまざまな文献を巧みに引用し、それらを膨大な量からマッチさせ、決定された尺に収められる技術を、拝見しては感心しております。
当方、中間管理職で僅かな部下を抱えており、少しでも徳のある指導ができる人間になれればと思い、あつかましくも相談させていただいた次第です。よろしくお願いします。
◆佐藤優の回答
説得力をつけるためには、読む力をつけることです。外国語学習の場合を考えてみましょう。
読む、聞く、書く、話すという4つの力のうち、読む力が残りの力の天井を定めます。母語(私たちの場合、日本語)に関しても、専門的な事柄については、読む力が能力の上限を定めることになります。もっとも小説家や学者の場合、書く力が他の力を、芸人の場合には、話す力が他の力を凌駕します。こういう特別の人たちを除けば、説得力をつけるためには読む力を向上させることが鍵になります。
日本人の読む力(読解力)が低下していることに、国立情報学研究所の新井紀子教授が警鐘を鳴らしています。新井先生は東京大学の入学試験を突破できるロボット、いわゆる「東ロボ」の研究をする過程で、中高校生の読解力が不足していることに気づきました。その実態についてこう述べています。
===============
高校生の半数以上が、教科書の記述の意味が理解できていません。これでは、8割の高校生が東ロボくんに敗れたこともうなずけます。記憶力(正確には記録力ですが)や計算力、そして統計に基づくおおまかな判断力は、東ロボくんは多くの人より遥かに優れています。
このような状況の中で、AIが今ある仕事の半分を代替する時代が間近に迫っているのです。これが、何を意味するのか、社会全体で真摯に考えないと大変なことになります。(中略)中高校生の読解力があまりに低い実態を訴えている理由は、この子たちが中学校を卒業するまでに、なんとしてでも教科書が読めるようにしないと、少子化に突き進んでいるのに移民は頑なに受け入れたくないという日本は、とんでもないことになるからです。
日本は欧米に羨まれる画期的に低い失業率を達成しています。それを維持するには、最低限、作業マニュアルや安全マニュアルを読んで、その内容を理解する必要があります。そのためには、教科書が読める読解力が是非とも必要なのです。
(『AI vs.教科書が読めない子どもたち』228~229頁)
===============
1
2
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
記事一覧へ
◆募集◆
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
『生き抜くための読書術』 ウクライナ危機、元首相暗殺事件、コロナ社会、貧困etc. 分断社会を打破する書物とは? |
記事一覧へ
◆募集◆
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form(PCのみ対応)
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form(PCのみ対応)
『40代でシフトする働き方の極意』 人生の転換点となる40代をいかに過ごすか? 外務省で国策捜査に巻き込まれて作家に転身するなど激動の40代を過ごした著者が明かす生き方の極意。 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ