更新日:2022年12月25日 20:34
ライフ

「家では嫁と娘に怒られるんだよ」深夜の上野アメ横に響く中年ギタリストの悲哀

青春時代はミュージシャンになりたかった

「このギターにはアンプが内蔵されているんだよ。もうボロボロだけど愛着があってもう15年以上使い続けているんだ」  そう話しながらおじさんはアンプの音量を一気に上げ始めた。駅に向かう人々も「何事だ?」と後ろを振り返る。観客は筆者一人であるものの、おじさんは昔よく弾いたという洋楽メドレーを披露。「私はパフォーマーでもなんでもないからね」とは言いつつも、人に聞いてもらいたいという気持ちもある。帰路に着く上野駅前の人々もおじさんの弾くクラプトンの曲が少しでも頭に残ったはずだ。  いままでサラリーマンとして家族を養ってきたおじさんであるが、若いころにミュージシャンを目指したことはなかったのだろうか。 「あったな~。仲間とバンドを組んでプロを目指していた時期もあった。でも結婚して子どももできちゃったからね。その子どもも今は社会人だから、俺も自分の時間ができるようになったんだ」  バンド仲間とはもう音沙汰なしというが、おじさんにも若さで輝いていた青春時代があるのだ。
上野おじさん

深夜のアメ横路地裏

家の外に居場所を求める中年サラリーマンたち…

 どんな街でも怪しいおじさんの1人くらいはいる。例えば千葉の松戸駅で全身ピンクの衣装を着たおじさんがおもちゃのマイクでエルビス・プレスリーを熱唱し続けている場面に遭遇したことがあるが、そういうおじさんでも話してみると意外や意外、ふつうの会社員なのであった。そして自分の時間をしっかり楽しんで充実した私生活を送っている。 上野おじさん 会社も家もなんだかイマイチという方は、ちょっと怪しいおじさんになってみるのもアリかもしれない。本当に怪しい人もいるかもしれないが、街にいる怪しいおじさんもただ趣味を楽しんでいるだけのちゃんとしたおじさんなのだ。マンネリ化した私生活がガラリと変わるかも?<取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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