首都高からひっそりと消える2つの料金所。その理由は?
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
日本橋付近の地下化が近ごろ話題の首都高だが、それについては別に筆をとらせていただくこととし、今回は大変地味な話題です。
去る5月20日、首都高湾岸線東行きの「大井」と、羽田線上りの「平和島」、計2か所の本線料金所の運用が停止された。現在はまだ料金所ブースは存在するので、通行車両は相変わらず狭いゲートをすり抜けているが、首都高によると、「平成31年度中までに料金所を順次撤去予定」とのこと。
「それが何か?」と思われるだろうが、平和島はともかく、湾岸線東行き大井料金所の撤去は、首都高研究家としては見逃せないポイントだ。なぜなら、この料金所を先頭にした渋滞が恒常化しているからだ。
大井料金所渋滞の主な原因は、料金所のすぐ先で起きる織り込み交通にある。料金所を通過してから大井JCTの分岐地点までのわずかな距離(約200m)で、湾岸線本線(東行き)とC2外回りに向かうクルマが左右に交錯し、流れを阻害している。本線料金所がなくなれば、もっと手前から分岐に備えて車線変更しておくクルマが増え、流れはかなり良くなるはずだ。
大井本線料金所撤去の目的もまさにそこにある。首都高のHPには、「よりスムーズな通行を可能とするため」と謳われている。
なぜ本線料金所を撤去できるかというと、現在は距離別料金制なので、ETC車はすべて入口と出口で通信を行っている。つまり大井と平和島の本線料金所は、現金利用車のためだけに存在していたようなものだが、それも、これまで料金所がなかった入口に料金所を新設することで解決できる。
今回の2か所の本線料金所運用停止と同時に、湾岸線東行きは「湾岸浮島」と「空港中央入口」の2か所、羽田線上りは「羽田入口」と「空港西入口」の2か所に、それぞれ料金所が新設された。
首都高は今年、C2の堀切-小菅間と板橋-熊野町間の拡幅を完成させた。これによって、首都高の「設計からして著しく不合理な個所」は消滅。これ以上の渋滞緩和は、混む時間帯の料金を高くするといった交通コントロール以外にないような状況になったが、そんな中で唯一小さな改善が可能と思えていたのが、この大井料金所に関してだった。
ただ、現状はまだ渋滞は緩和されていない。まだ料金所の運用が停止されたことが周知されていないし、料金所ブースも存在するため、クルマの流れが変わっておらず、相変わらず料金所通過直後に織り込み交通が発生している。
しかし近い将来、料金所そのものが撤去されれば、流れは今よりスムーズになるはず。まあその時は、東京港トンネルやC2に向かう上り坂に渋滞の先頭が完全移行するだけとも言えるが、現状より渋滞する時間帯が短くなるなど、多少なりとも改善されることは間違いなかろう。
それでも、まだ懸念はある。それは大井南入口の存在だ。
大井南入口料金所は、大井本線料金所のすぐ隣に並んで存在するが、本線料金所が撤去されても、入口料金所は残さざるを得ない。つまり、大井南入口から合流したクルマの過半数は、本線料金所撤去後も相変わらず短い距離で追越側に車線変更することになり、渋滞の原因が残ってしまうのだ。
しかしこれも解決策はある。本線料金所の撤去と同時に、大井南入口料金所をできるだけ南側に移設し(約100m)、現在より手前で本線に合流させる形にすることだ。大井本線料金所が撤去されれば本線の流れが速くなるから、その分入口からの加速部を長く取る必要もあり、是非ともそうすべきだ。
それについて首都高は、現在関係諸機関と協議中とのことで、コメントはもらえなかったが、安全対策上も、大井南入口料金所の南側への移設を、是非とも行っていただきたい。
取材・文・写真/清水草一1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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