更新日:2018年06月20日 17:13
スポーツ

攻撃陣で最も頼れる選手・乾貴士がサッカー日本代表に必要な理由

確固たる自信を胸に夢の舞台へ

 グループリーグ初戦の対コロンビア戦まで、いよいよ残り3週間を切った。ところが、この期に及んで日本代表はチームの土台すら築くことができていない。本番2か月前に監督が解任され、先日ようやく新体制として始動したばかりなのだから当然だ。いまだかつてないカオス状態の中、本番までに新たな戦術を成熟させるのは不可能に近いだろう。  チームのベースがない。それを作る時間もない。となれば、単純に今一番うまい選手を軸に据え、そこを基準にコンビネーション優先でメンバーを組むのが、残り短い期間でできる最も現実的な強化策だ。どんなやり方を選んでも付け焼刃にしかならないが、その中でもせめて少しでも可能性の感じられる選手を中心に据えるべきだろう。  現在の3-6-1の布陣の中で乾を起用するとしたら、1トップのすぐ後ろの2シャドーのどちらかだ。先日の対ガーナ戦、西野監督はこの位置にかつての教え子でもある宇佐美貴史、そしてエースの本田を並べた。どちらも今季、クラブチームでレギュラーとして活躍した選手だ。だが前述したように本田はメキシコリーグ、宇佐美が活躍したのはドイツ2部だ。スペイン1部で試合に出続けた乾とは、毎試合の強度やその中で得てきた経験値など、あらゆる点で比べ物にならない。

 乾を主軸に据える上での唯一の懸念材料は、6月2日で30歳となった乾にW杯本大会の出場経験がないことだろうか。だがこの点に関しても、本人は特に気に留めていない様子だ。 「一度も出たことがないので自分にとっては未知の大会ですけど、出たらやれる自信はあります。レアルやバルサを筆頭にスペインには本当に強いクラブがたくさんありますけど、その中で3年間プレーして得た自信があるので」  乾が対峙してきたレアル・マドリードやバルセロナといったチームは、日本がグループリーグで対戦するコロンビア、セネガル、ポーランドの3ヵ国よりも確実に強い。コロンビアのハメス・ロドリゲスやポーランドのレバンドフスキといったワールドクラスのタレントと同じピッチに立つことも、今の乾にとっては日常的なことだ。「ビビらずにやれる自信はある」という言葉は、決して強がりなどではない。  そしてこれまで本大会に縁がなかっただけに、そこに懸ける思いは誰よりも強い。 「サッカー選手である以上ワールドカップのピッチに立つのは夢ですし、当然出たいという気持ちは強いです。今季はリーガでも十分やれたと思っているので、ワールドカップでも自信を持ってプレーしたいですね。やってやりますよ」  若くして将来を嘱望されたその男は、10数年の鍛錬の末に遂に世界基準を肌で知る領域にまで到達した。フットボールへの純愛を貫き、脇目もふらずに駆け抜けてきたこの男を、先発のピッチに送り出してみてはいかがだろうか。 取材・文/福田悠 撮影/難波雄史(本誌)
フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129
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