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攻撃陣で最も頼れる選手・乾貴士がサッカー日本代表に必要な理由

ガーナ戦の完敗から一夜明けた5月31日(木)、ロシアW杯を戦うサッカー日本代表メンバー23名が発表された。本大会へ向かう体制が整い、本来であれば「さあ行くぞ」と機運が高まるところだが、現在の日本代表の状態は順風満帆というには程遠い。むしろ過去5大会と比べ最も期待感の薄い状態となってしまっている。

 西野朗新監督は実績を重視した選考を行い、本田圭佑、岡崎慎司、香川真司のいわゆる“ビッグ3”も順当にメンバー入りした。だが、岡崎と香川は怪我の影響でリーグ戦終盤はほとんど試合に出場することができておらず、試合勘に不安を残している。本田はシーズンを通して安定したパフォーマンスを披露したものの、所属するパチューカはメキシコリーグのチームだ。いくら活躍したとはいえ、リーグのレベルを考えれば欧州4大リーグでのそれと同列で評価するのは難しい。


 本番直前で監督が代わり、システムも変更。ただでさえ“一夜漬け”で本大会に挑むというのに、加えて選手個々の状態までもが不安視されているのだ。

 だがそんなスクランブル状態の日本代表の中でも、救世主となりうるアタッカーが存在する。世界最高峰の舞台であるスペインリーグ1部・SDエイバルで主力として活躍し、昨日同じスペイン1部のレアル・ベティスへの移籍が発表された乾貴士だ。

スペインで積み重ねた充実の日々


 野洲高校時代に全国高校選手権などで鮮烈な活躍を見せた乾は卒業と同時にプロ入り。横浜F・マリノス、セレッソ大阪でプレーした後、2011年に活躍の場をドイツへ移す。そこでの活躍が評価され、2015年の夏、スペイン1部で2年目を迎えていたエイバルに加入した。

 兼ねてからの念願だったリーガデビューを果たした乾。前所属のフランクフルトでも攻撃の核として活躍したが、そんな乾から見てもスペインのレベルの高さは異次元だった。

乾貴士

「スペイン人はホンマに、代表に選ばれていないような選手でもみんなうまいんですよ。トラップやキック、ドリブルといったボールを扱う技術はもちろんですが、それ以上にみんな“サッカーをよく知っている”という感じです。ツボを押さえていて、勝負所を分かっている。中に入って実際にプレーしてみて初めて、“あ、やっぱりスペインはこんなにもレベルが高いんやな”と実感しました」

 それまでプレーしていたドイツ・ブンデスリーガも十分にハイレベルなリーグだが、それをさらに上回る衝撃。さすがの乾でさえも、移籍当初は自らの地位を確立するのに苦労した。当時27歳という決して若くない年齢で直面した壁を前に、普通の選手なら自らの限界を悟ってしまいそうなところである。

 だが、乾は違っていた。世界最高峰のフットボールは、むしろ「もっと上手くなりたい」という根っからのサッカー小僧の好奇心をおおいに刺激した。

「スペインに来てからこれまで以上にサッカーを楽しめています。もちろん難しいと感じることはたくさんありますけど、毎日が充実していますね。日々勉強になっていますし、自分のサッカー観みたいなものが広がっている実感もあります」

 スペインに渡ってから、乾のプレーは確実に磨かれた。攻撃のみならず守備面の改善も著しく、ポジション修正やカバーリングの精度が向上。サッカーIQが急速に高まったことで、元来の高い潜在能力がさらに開花した。一つひとつの動きが洗練され、無駄な動きが減ったことで余裕が生まれ、元から天才的だったボールテクニックもさらに研ぎ澄まされていった。

 加入2年目の最終節にはバルセロナを相手に敵地・カンプノウで1試合2ゴールを奪うなど、大きなインパクトも残した。世界のトップ・オブ・トップと言える相手にも堂々と渡り合い、いつしか乾はエイバルに欠かせない選手となった。3年目を迎えた今季は、リーグ戦38試合中34試合に出場するなど完全にレギュラーに定着。対戦相手の監督や選手からも「エイバルで最も注意すべきは乾」と名指しで警戒されるほど、その存在感は際立っていた。

 シーズン終盤に負傷し心配されたが、本人は「今はほぼ100%の状態に戻っている」と話す。怪我の影響で欠場したのも最終節のみだったため、試合勘についても問題はない。

 直近のシーズンで残した実績・プレー内容・リーグのレベル・コンディションといった複数の観点から見ればより歴然だが、現時点で日本の攻撃陣で最も頼れる選手は間違いなく乾なのだ。

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確固たる自信を胸に夢の舞台へ

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