15分おきにスマホチェックする新入社員…どう接するべき?
【佐藤優のインテリジェンス人生相談】
“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに、読者の悩みに答える!
◆今年の新入社員との接し方がわかりません
会社人間(ペンネーム) 営業職 男性 46歳
新入社員との接し方がわかりません。今年の新卒の傾向として「リアクションが薄い」ということがどこかで指摘されていましたが、まさしくそのとおり。何を考えているのかわかりません。そのうえ、15分おきにスマホをチェックするような集中力の低さ。ここ5年ぐらいの傾向ではありますが、飲みニケーションにも消極的。
電話をすれば、メールで折り返しが来る。対面でのコミュニケーションが嫌なのか、報告、確認もあまりしない。他部署では入社1か月足らずで辞めたやつもいるため、厳しく指導できる空気もなくなっています。佐藤さんはどうやって、若い人と接しているでしょうか?
若者文化を学んだほうがいいでしょうか? アドバイスを頂けると助かります。
◆佐藤優の回答
あなたと同じような悩みを抱えている人は多いと思います。私自身が外務省で部下を指導するときも、現在、大学で学生を教えるときにも注意しているのは、若い人たちを人格的に対等なパートナーとして扱うことです。もちろん、職制上の指揮・命令の関係、大学では教師としての立場を放棄することはありません。
それでも相手を対等のパートナーとして扱うことは可能です。この点に関して、慶應義塾大学商学部・大学院商学研究科の菊澤研宗教授の以下の見解がとても示唆に富んでいます。
===============
何よりも、不完全な人間が批判的な議論を展開するためには、上司には部下の自律性を引き出すような努力――部下に自由意志を行使させる工夫――が必要である。上司は、部下にもそのような自由意志が備わっていることを教え、その意志を行使させる必要があるのだ。このような活動こそが、カントが「啓蒙」と呼んだそれである。
このことは、上司が部下に対して「自分の意見を批判しろ」といい、それに従って部下が上司の意見を批判するということではない。それは、他律的な行動でしかない。そうではなく、上司は部下に批判的な議論――自由意志を基礎とする自律的行動にもとづく議論――をさせるような場を提供する必要があるのだ。
(中略)簡単にいえば、人を単なる物や動物のように扱ってはならないということである。このようなカント的人間関係が成り立てば、自然に自分の目的を達成するために、別のメンバーの意見を簡単に否定したり、簡単に肯定したりすることはできなくなるのだ。常に、相手の意見に耳を傾け、「どこまで認めることができるのか」「どこまで認められないのか」、その限界を確定するような批判的な議論が自然に展開されるのだ。
(中略)絶えず批判することによって、組織はより現実適応性を高める方向へと進歩するだろう。
(『なぜ「改革」は合理的に失敗するのか』211~213頁)
===============
1
2
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数
記事一覧へ
◆募集◆
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form
『生き抜くための読書術』 ウクライナ危機、元首相暗殺事件、コロナ社会、貧困etc. 分断社会を打破する書物とは? |
記事一覧へ
◆募集◆
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form(PCのみ対応)
佐藤優さんへの相談を募集中。匿名希望の方はペンネームを記入してください。採用者には記念品をお送り致します。⇒応募はコチラから https://nikkan-spa.jp/icol_form(PCのみ対応)
『40代でシフトする働き方の極意』 人生の転換点となる40代をいかに過ごすか? 外務省で国策捜査に巻き込まれて作家に転身するなど激動の40代を過ごした著者が明かす生き方の極意。 |
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ