更新日:2022年12月30日 10:37
カーライフ

日本のエコカーの暗い未来「水素社会どころかEV時代すら来ないかも」と考える理由

水素ステーションより設置費用が安いEV用急速充電器。しかし課題も……

 一方、EV用の急速充電器なら、1基数百万円。しかも比較的場所を選ばず設置できるので、すでに7000か所以上になっている。なによりもEVは、自宅に車庫があれば、普通充電器を10万円程度で設置できる。  水素の充填は3分程度で済むが、ステーションまで往復1時間も2時間もかかるのでは、航続距離が短めで充電時間がかかっても、相対的にEVの方が便利に感じる。

EVの電池を充電するよりも、FCVの水素を充填するほうが短時間で済むが……

 ちなみにピュアEVの国内保有台数は、現在約10万台。このところ年間1万台以上増えている。最量販EVである日産リーフ(315万円~)は、新型に切り替わった効果もあり、昨年は1万6925台を販売。今年も4月までで1万台以上を売った。

2代目日産リーフ

 実は現在の急速充電器、EVのバッテリー容量の増加に対して、すでに充電速度が足りなくなっている。1回の充電(30分間が上限)では、バッテリー容量40kwの新型リーフですら満充電できず、テスラモデルS(最大バッテリー容量100kw)など、日本で一般的なチャデモ規格の急速充電器での充電1回で、たった80km程度しか走れない。  つまり近い将来、充電器の更新が必要になるが、水素ステーションを造るのにくらべたら、費用はたかが知れている。

テスラ・モデルS

 FCVに活路があるとしたら、トラックなどの大型車だと言われている。大手運送会社が、自社敷地内に水素ステーションを設置するなどして、1基で多くの車両に充填すれば、高額なステーションの設置費用も回収できる可能性がある。ただ、FCVトラックのトータルコストが、ディーゼルトラックを下回ることができるのかは未知数だ。  そうこうしているうちに、ガソリンやディーゼルの内燃機関が、新技術でエネルギー効率を改善し、EVやFCVに迫ってくる可能性もある。  現状すでに、ハイブリッドカーのプリウスのエネルギー効率は、EVのリーフにかなり接近している。EVの車両側の効率化は限界なので、改善するとしたら発電方法だが、原発には頼れないし、ソーラーなどのクリーン発電はコストが高い。ヘタすれば、水素社会はおろか、EV時代すら来ない可能性がある、と個人的には見ている。 取材・文・写真/清水草一
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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