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投げ捨てられた猫が、古本屋の猫店長として就職するまで

猫店長が古本屋に就職した理由

 この古本屋は先代から続いているかなり古い店。では猫店長はいつ、この店にやってきたのだろうか。本の上をピョンピョンしている猫店長。かなり若い気もするが。 「この子はもう14歳で猫にしてはかなりの高齢よ。14年前の5月5日に公園で捨てられているところを拾ったの。だから名前はコッコ」  そう言って当時を振り返る店主の女性。公園の近くを歩いていると、突如、「フギャーッ!」という鳴き声とともに車の窓から2匹の猫が投げ捨てられたそうだ。1匹はどこかへ逃げてしまったが、猫店長は無事に保護され今にいたるというわけだ。
猫店長の模様

猫店長の模様

コッコの柄を見てみるとね、雑種のようで雑種じゃない模様をしているでしょう。確証はないけど、たぶんブリーダーが配合に失敗して雑種みたいになっちゃった猫を、商品にならないからそのまま捨てたんだと思う。なんとなく、そんな雰囲気だったわ。コッコみたいにブリーダーに捨てられてしまう動物は数え切れないほどいるでしょう」 猫店長 猫店長をなでながら店番の女性はそう話した。野生の経験がなく生まれたときから人間の手で育てられた。裏を返せば、捨てたブリーダーのおかげで人間に怯えることなく人懐っこい性格になったというわけだ。そう考えるとなんだか複雑な気分にもなるが……毎日、同じ場所でみんなにゴロゴロ言いながら、地元では“猫店長”として親しまれてきたようだ。  いまでは猫店長を目当てに遊びに来る客も多いらしい。店主の女性への恩返し? とはいえ、今日も本の上で寝転びながら、客が来るのをのんびりと待ち続けているのだった。<取材・文・撮影/國友公司>
元週刊誌記者、現在フリーライター。日々街を徘徊しながら取材をしている。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』(彩図社)。Twitter:@onkunion
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